研究課題/領域番号 |
20H03818
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
小林 孝彰 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70314010)
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研究分担者 |
岩崎 研太 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (10508881)
三輪 祐子 愛知医科大学, 医学部, 助教 (90572941)
野田 貴幸 愛知医科大学, その他部局等, 薬剤師 (50817088)
石山 宏平 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (50437589)
勝野 敬之 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (60642337)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 腎移植 / 免疫制御 / エピトープ / パラトープ |
研究実績の概要 |
感染症と慢性拒絶反応(de novo DSA=新規ドナー特異的HLA抗体)に着目し、ウイルス抗原、ドナーHLAに特異的なエピトープ、パラトープの双方向からの解析により責任因子を同定し、特定の免疫応答を制御(促進or抑制)する方法の開発をめざす。下記3つのプロジェクト【A】【B】【C】に分けて効率的な研究を進めている。令和2年度に得られた研究成果をプロジェクトごとに記す。 【A】de novo DSA産生におよぼすHLA、B cell epitope, T cell epitopeミスマッチの影響を解析した。生体腎移植691例において、B cell epitope(EPLET)ミスマッチとT cell epitope(PIRCHE)スコアが独立してde novo DSA産生に影響することを見出した。移植前のshared T cell epitopeの存在が早期にde novo DSA産生を引き起こすことを示した。【B】BKV感染の実態調査の結果、生体腎移植170例中の22例(13%)にBKViremiaを確認した。Viremia 22例中9例(41%)にde novo DSAを検出し、BKV感染とde novo DSAの有意な関連を見出した。リスク因子解析では、 移植前のレシピエントの抗BKV抗体が低く、尿中DNA陰性、ドナー尿中DNA陽性の場合に、BKViremiaとなるリスクが高かった。Subtype解析では、ドナー、レシピエントが異なる場合にBKViremiaとなる割合が高かった。【C】内皮細胞障害抵抗性獲得に関わる因子として、特に ABO不適合移植における抗A/B抗体の接着が、PD-L1分子の発現増強を引き起こし、CD4T細胞の免疫応答を減弱していることを明らかにした。さらに、mTOR阻害剤、スタチンは、活性化内皮細胞のHLA class IIの発現増強を制御することで、Graft accommodationに関わっていることを明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ順調に成果が得られており、計画は予定通り進行していると考える。 3つのプロジェクト研究のうち【A】B cell epitope, T cell epitopeミスマッチ解析に基づくde novo DSA産生リスク因子の解析と予防法の確立:B cell epitope解析の重要性は海外でも多く報告されていたが、今回、T cell epitope解析もde novo DSA産生に大きく影響することを明らかにした。移植前のshare T cell epitopeの存在が移植後早期のde novo DSA産生を引き起こすことを明らかにした。今後はnaive (primary) の反応、memoryの反応性と区別することで、臨床的意義を明確にする。【B】 BKVなどウイルス感染、de novo DSA産生におけるエピトープ、パラトープの特定と抗体産生に関与する濾胞ヘルパーT細胞、濾胞制御性T細胞への分化誘導と制御方法の開発:臨床例の検討は進んでいる。BKウイルス感染(Viremia)の状況を調査するため、移植前のドナー、レシピエントの尿中BKV-DNA, 血中BKV IgG抗体、移植後の血中BKV-DNA定期的モニタリング(2M, 6M, 1Y)システムを確立し、BKウイルスsubtype解析も実施した。【C】抗体産生後に対応可能な内皮細胞障害抵抗性獲得のための新たなる治療法の開発においては、新規にAutophagyの観点からも解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の方向性には大きな変更を加えず、当初の予定通り3つのプロジェクトを中心に研究を進めていく方針である。プロジェクト【A】においては、 de novo DSA産生に及ぼすT cell epitope、B cell epitopeの臨床的意義を詳細解析するために、Graft accommodationに関わるとされるABO不適合、感作歴の有無による影響を調べる。さらに、ナイーブおよびメモリーT細胞に分けて、移植前、移植後のIndirect recognition pathwayを検出するドナーPBMCを貪食後のレシピエント樹状細胞を用いてCD4T細胞の反応性を解析する。 プロジェクト【B】においては、ウイルス(BKV、CMV)に対する細胞性免疫を評価するアッセイを確立する。COS-7を用い、遺伝子導入により、HLA-A2, A11, A24、そしてCD80を発現した細胞を樹立し、Peptide結合実験を行い、反応するCD8細胞を検出できるシステムを確立し、TCRレパトア解析を行う。 TCR解析結果からde novo DSA制御、感染のコントロールが可能か検討を行う。BKV抗体産生に関わるHLA class II+ウイルスペプチドに対するCD4 T細胞の解析にも着手する。 プロジェクト【C】では、autophagyにも着目し、スタチン、mTOR阻害剤、 SGLT2阻害などの薬剤の内皮細胞に及ぼす影響を検証する。移植グラフトに浸潤するクロファージに対しても注目し、Graft Accommodationに関する理解を深め、ウイルス感染、抗体の細胞接着後の免疫応答に及ぼす影響を解析する。
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