研究課題/領域番号 |
20H03819
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
岩瀬 明 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20362246)
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研究分担者 |
北原 慈和 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (20714728)
大須賀 智子 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (30778296)
小松 紘司 愛知医科大学, 医学部, 講師 (40456893)
小谷 友美 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (70359751)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 卵巣機能不全 / 自己免疫 / 自己抗体 / POTE |
研究実績の概要 |
今なお卵巣機能不全、反復流産といった治療困難な不妊症・不育症が存在する。これらの疾患には自己免疫疾患が合併することがあり、自己免疫機序が推定されているがその詳細は不明である。我々は、甲状腺自己抗体陽性卵巣機能不全患者血清中に卵巣顆粒膜細胞に反応する自己抗体を見出し、LC/MS/MSを用い、その標的タンパクProstate, ovary, testis, ankyrin domain family member F (POTEF)を同定した。 昨年度までの研究で、POTEFがヒト卵巣顆粒膜細胞および卵母細胞で発し、卵胞発育により発現が変化することを見出し、さらにin vitroの実験からPOTEF発現により細胞増殖が抑制されること、この機序にオートファジー抑制が関与することを実験的に証明した。 加えて精製POTEFタンパクを使用したヒト血清中の抗POTEF抗体アッセイ系の基盤を確立した(予備実験の段階で特許出願中)。卵巣機能不全患者血清中の抗POTEF抗体価を測定したところ、正常卵巣機能女性より有意に高いという結果を得た。 令和3年度は、POTEF発現と患者背景と不妊治療成績との関連を検討した。体外受精治療時に得られた卵胞液と顆粒膜細胞を採取し、顆粒膜細胞からmRNAを取得した。POTEF発現をqRT-PCRで検討したが、臨床成績との関連は見出せなかった。現在、不妊因子や卵巣予備能などの患者背景との関連性を検討中である。 in vitroの実験では、POTEF発現調節因子の探索をおこなった。POTEFのプロモーター領域に卵巣分化に重要な転写因子FOXL2の結合部位があることをデータベース検索で見出した。FOXL2発現ベクターを顆粒膜細胞セルラインに導入し、POTEFの発現細胞増殖などの変化を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度のPOTEF機能解析、2年目の臨床検体での解析は予定通りであった。3年目には動物実験とする予定であったが、甲状腺機能不全モデルマウスの作製に着手できる予定である。また、POTEF発現調節にも3年目に踏み込む予定であったが、すでにFOXL2という候補を同定しており、こちらも順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は甲状腺機能不全マウスを作製し、甲状腺機能低下と卵巣機能の関連について、卵巣でのPOTEの発現変化との関連を検証する。これまで明らかになっていない甲状腺機能低下と卵巣機能不全との関連についてPOTEFの関与を検証する。 本マウスモデルについては、抗甲状腺薬投与とアジュバントを用いた自己免疫機序の2系統について、作製を行う。 POTEF発現調節については、FOXL2を中心に解析を行う。前年度に収集した臨床検体でのFOXL2発現の評価を行うとともに、FOXL2強制発現およびノックダウンの系で、POTEF依存性、非依存性の遺伝子発現および表現系変化を探索する。FOXL2は、卵巣の分化、その遺伝子変異が卵巣機能不全等に関連することが示されており、卵巣発生や他疾患の病態解析などへ研究を展開する。
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