研究課題
本課題では腹腔内全体を一つの包括的環境基軸と見なし、腹膜中皮-脂肪(土壌)-卵巣癌(種)を1つのユニットとして捉えた上でその相互作用に着目し、卵巣癌の悪性化・腹膜進展機構を解明することを目的とした。本研究の成果において、独自の天井培養法によって大網から脱分化脂肪由来間葉系細胞(ADSC)が有する卵巣癌悪性化への影響を調べ、卵巣癌細胞の増殖の促進及び卵巣癌細胞の遊走能亢進、in vivo での腫瘍形成能の増大が誘導されることを、in vivo imaging system (IVIS)を用いた実験系により示すことに成功し、一連の成果をもとに論文化を行い、International Journal of Cancerに採択された。一方で、本研究の過程において、卵巣癌腹膜播種モデル動物を詳細に観察する際に、卵巣癌細胞が脂肪細胞の近傍に効率的に接着する所見を得た。これは脂肪細胞の直上に存在する腹膜中皮細胞に卵巣癌細胞がより接着しやすい傾向にあることを示唆していることから、同部位の電子顕微鏡による評価や、網羅的発現分子解析を行い、卵巣癌接着の標的となりうる候補物質を複数同定した(論文準備中)。また、進行卵巣癌の腹膜微小環境において卵巣癌関連腹膜中皮細胞(ovarian cancer-associated mesothelial cells: OCAM)が卵巣癌の進展に深く寄与することをこれまでに同定しているが、正常腹膜中皮細胞がOCAMへと変貌する過程を抑制する候補物質としてcalcitriol(ビタミンD)が有望であることを実証し、本研究内容にて制作した論文が国際雑誌Matrix biologyに採択された。一連の研究成果は、トランスレーショナルアプローチによる基礎・臨床横断的な医学研究において、腹腔内全体を一つの包括的環境基軸と見なした研究基盤となった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 2件)
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