研究課題/領域番号 |
20H03825
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
杉野 法広 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10263782)
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研究分担者 |
田村 功 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (40610663)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オルガノイド / 子宮内膜上皮細胞 / 子宮内膜間質細胞 / 再生医療 / 不妊症 / 着床不全 |
研究実績の概要 |
本年度は、内膜上皮・間質細胞の混合オルガノイド(ミニ子宮内膜)のin vitroでの作製を目指し以下の実験を行った。 1)上皮オルガノイド培養:当初は、マウス子宮内膜オルガノイドを培養し、レトロウィルスでGFP遺伝子を導入しそれを移植する計画であった。しかし、子宮内膜オルガノイドへの遺伝子導入効果が非常に低かった。よって、GFPマウスの子宮内膜オルガノイドを作製・移植する方針とした。GFPマウスを入手し、子宮内膜上皮オルガノイドを樹立した。このオルガノイドはGFP陽性を示しており、移植に適したオルガノイドであることを確認した。また、既報通りの形態・増殖を示すことを確認した。 2)間質細胞培養:ミニ子宮内膜を作製するには間質細胞の3次元培養を可能にする必要がある。これまで、間質細胞は単層培養で行っていたので3次元培養が可能かを調べた。ヒト、マウス子宮内膜間質細胞を単層培養で増殖させ、これをトリプシンではがした後、非吸着性 96 well plateで培養し、3次元の細胞凝集塊を形成することに成功したが、その後培養を続けても細胞増殖は見られなかった。また、培養液内にプロゲステロンを添加し脱落膜化が誘導されるかを確認したが、脱落膜化マーカーであるIGFBP-1やPRL遺伝子の発現誘導は認めなかった。また、マトリゲル内に間質細胞を埋め込むことで同様の実験を行ったが、細胞増殖や脱落膜化は起きなかった。上皮オルガノイドと異なり間質細胞は3次元の培養が難しく更なる検討を要する。 3)上皮オルノガイド・間質細胞共培養:上皮オルガノイドと間質細胞を非吸着性 96 well plateで培養したところ、凝集塊を形成し、周囲に間質細胞を伴うオルガノイド構造が作製できた。しかし、上皮オルガノイドは増殖したが、間質細胞の増殖は起きなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
間質細胞の3次元培養が困難であり、混合オルガノイド(ミニ子宮内膜)の作製には至っていないが、移植細胞となる子宮内膜上皮オルノガイドは、GFPマウスから樹立することに成功している。よって、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに樹立した子宮内膜オルガノイドの移植効果を検討する。そのために、マウスの着床不全モデルを作製する。マウス子宮腔内にエタノールを注入すると子宮内膜が菲薄化した着床不全モデルマウスを作成することができる。また、マウスの両側子宮動脈を結紮し、子宮内膜が菲薄化した着床不全モデルマウスを作成することも試みる。これらのマウスに、in vitroで作製した子宮内膜オルガノイドを子宮内に移植することで、子宮内膜の菲薄化が改善し妊娠が成立するかを調べる。まずは、マウスオルガノイドの移植効果を調べる。GFPマウスより作製した子宮内膜オルガノイドを同系統マウスに移植する。移植細胞の増殖のため恒常的にエストロゲンとプロゲステロン含有デポ剤を腹腔内投与する。移植後 1、2、4 週間で子宮を回収し、GFP の発現によりオルガノイド由来の子宮内膜構造がマウス子宮内に構築されているかを調べ、また、子宮内膜の菲薄化が改善し妊娠が成立するかを調べる。さらには、GFP遺伝子を導入したヒト子宮内膜オルガノイドを重度免疫不全マウス(NOD/SCID)の子宮内に移植することでヒト細胞由来の子宮内膜がマウス子宮内に構築されているかを調べる。
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