研究課題
1)子宮内膜上皮オルガノイドがマウスの子宮に生着するかの検討GFPマウスから分離培養した上皮細胞を用いてオルガノイドを作成し、同系統マウスの子宮内に移植し、エストロゲンとプロゲステロン含有デポ剤を皮下投与した。移植後4 週間で子宮を回収し解析したところ、GFP陽性の子宮内膜上皮構造が子宮内に構築されているのが確認できたので、子宮内膜上皮オルガノイドは移植により生着することが分かった。2)子宮内菲薄化モデルの作製と子宮内膜上皮オルガノイドの移植ミニ子宮内膜を移植することにより菲薄化子宮内膜が改善するかを検討するために、子宮内膜菲薄化モデルを作製した。マウス子宮腔内にエタノールを注入することで子宮内膜が菲薄化した着床不全モデルマウスを作成することを試みた。しかし、子宮全体が高度の線維化を起こしており、損傷程度が強すぎると考えられ、上皮オルガノイドを移植しても生着しなかった。3)新規のミニ子宮内膜樹立方法の確立これまでは上皮オルガノイドと間質細胞をそれぞれ別々に培養し、その後マトリゲル内で合わせて共培養を行うという方法でミニ子宮内膜を作製していた。しかし、この方法では3次元状の構造体はマトリゲル内でしか維持されないため、移植組織としては不適切である。また、上皮細胞と間質細胞の距離が離れていることから、実際の子宮内膜構造とは異なるものであった。そこで、コラゲナーゼ処理したマウス子宮組織を上皮細胞と間質細胞を分離することなく単層培養を行った。すると、1週間後に自発的に凝集塊が形成された。この凝集塊は、外側を一層の上皮細胞が覆っており、内部が間質細胞で充満されている子宮内膜様の構造を呈していた。また、この凝集塊は非吸着性96well plateに播種し培養を継続することができた。今回、新規の方法によって、世界で初めて上皮細胞と間質細胞から構成されるミニ子宮内膜の作製に成功した。
2: おおむね順調に進展している
ミニ子宮内膜の一部となる子宮内膜上皮オルノガイドの作成法を確立し、子宮内膜上皮オルノガイドを移植することで子宮内に生着することに成功している。また、新規の方法でミニ子宮内膜の作製に成功した。したがって、おおむね順調に進展していると考える。
1)子宮内膜菲薄化モデルでのオルガノイド移植の効果新たなモデルとして、両側子宮動脈を結紮することで子宮内膜が菲薄化した着床不全モデルマウスを作製する。このマウスに子宮内膜上皮オルガノイドやミニ子宮内膜を移植することで菲薄化子宮内膜が改善するかを調べる。2)作製したミニ子宮内膜が子宮内膜としての特徴を持っているかの確認令和2年度に新規に見出した方法により作製したミニ子宮内膜が生体内の子宮内膜のようにステロイド反応性を示すかを検討する。①上皮細胞では、プロゲステロンにより着床期の遺伝子発現が誘導されるかを確認する。培養液内にプロゲステロンを加えてミニ子宮内膜を培養する。着床期に上皮細胞で発現が上昇する遺伝子(LIF、MUC1)の発現が上昇するかを免疫染色で確認する。②間質細胞では、脱落膜化が誘導されるかを確認するために、培養液内にcAMPとプロゲステロンを加え4日間培養する。脱落膜化マーカーである IGFBP-1やCOX-2 の発現が誘導されるかを免疫染色で確認する。3)ミニ子宮内膜と胚盤胞を用いたin vitro着床モデルの作製我々が確立したミニ子宮内膜は、実際の子宮内腔のように、間質細胞層の外側を上皮細胞層が覆っている。よって、マウス胚と共培養することで着床現象をin vitroで再現できる可能性がある。GFPマウスから胚盤胞を回収し、ミニ子宮内膜と非吸着性96well plateで共培養を行う。培養後経時的にミニ子宮内膜を回収し、GFP由来細胞が上皮細胞下に浸潤しているかを観察する。また、胚由来細胞の絨毛細胞への分化をマウス絨毛細胞のマーカーであるProliferinで染色を行い確認する。また、マウスでは着床部位の間質細胞が脱落膜化反応を起こすことが知られている。共培養後にミニ子宮内膜を回収し脱落膜化マーカーであるIGFBP-1やCOX-2の免疫染色を行う。
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