研究課題/領域番号 |
20H03832
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
山田 武千代 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (70283182)
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研究分担者 |
海老原 敬 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20374407)
植木 重治 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (60361234)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 真菌 / アレルギー / 鼻副鼻腔炎 / Galectin-10 / Asp f 1 |
研究実績の概要 |
鼻茸を有する慢性副鼻腔炎患者で保存的治療に抵抗する分子病態を証明し、難治性上気道病態の病態を解析するため、鼻茸由来線維芽細胞のケモカイン産生と細胞内分子を標的にした治療の可能性について証明した。難治性好酸球性副鼻腔炎には好酸球やILCsが豊富であり、我々の研究グループは好酸球由来のDNAの特徴や転写因子によるILCsの制御など新しい現象を最近証明した。好酸球はアスペルギルス分生子により活性化しエトーシスを生じるがチロシンキナーゼSykの阻害剤で抑制される。 多施設共同研究において、我々は未治療の73症例の気管支喘息合併副鼻腔炎の吸入抗原特異的IgEの検討で、真菌に対する血清特異的IgEが総IgEと最も高く相関し、真菌に対するIgE陽性例では、気管支喘息がより重症であることを明らかにしているが、副鼻腔炎局所に真菌アレルギーが存在するか不明であった。既存のアレルギー性真菌性副鼻腔炎の診断基準も提案されているが、鼻茸を有する慢性副鼻腔炎で既存の保存的治療に抵抗性で手術が必要となる場合鼻茸の再発率は5年で半数と高値であり、鼻茸の手術症例の病態を検討することが重要となる。副鼻腔粘膜への真菌の浸潤を組織像で否定して好酸球の浸潤を確認し、鼻茸組織中から真菌アレルゲンと抗原特異的IgEの存在を証明することが直接的な証明になると考えて検討した。更に、鼻茸組織を用いて網羅的な分子解析を行い、これらのデータとの関連を観察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(Chronic rhinosinusitis with nasal polyp: CRSwNP)患者から内視鏡下鼻副鼻 腔手術中に得られた鼻茸組織を利用して,局所鼻粘膜組織におけるAspergillus fumigatus抗原(Asp f 1)の同定、Type2免疫応答について検討した。手術をうけた103例の鼻茸組織中のAsp f 1,Aspergillus特異的IgE,総IgE濃度、好酸球特異的な細胞質蛋白であるGalectin-10を測定した。18個のサンプル(15.9%)がAsp f 1に対して陽性であり、 Asp f 1レベルは、アスペルギルス特異的IgEレベルと正の相関があり(rs = 0.68、p <0.01)。 鼻ポリープのアスペルギルス特異的IgEレベルは、低Aspf1グループよりも高Aspf1グループで有意に高かったが、IgMレベルに有意差は観察されなかった。 更に、Asp f 1レベルは、組織Galectin-10レベル(rs = 0.54、p <0.01)、IL-4レベル(rs = 0.86、p <0.0005)と正の相関が認められた。CRSwNP患者の鼻ポリープにおけるアスペルギルスAsp f 1抗原のレベルを定量化した実験結果であるが、組織中の抗原を定量化しアレルギー炎症と関連あることを証明したせ世界最初の研究である。
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今後の研究の推進方策 |
鼻茸組織から真菌アレルゲンと抗原特異的IgEの存在を証明した報告はないため、本研究のすべてが独創的となる。鼻茸患者データベースの構築と網羅的解析、鼻茸分離細胞、鼻粘膜構築細胞を用いた検討を行う。末梢血より好酸球を分離し、鼻茸抽出物、真菌抗原またはアスペルギルス分生子で刺激し、エトーシス、DNA産生、ガレクチン10産生を観察する。鼻茸浮遊細胞を用いて真菌抗原またはアスペルギルス分生子で刺激し、シャルコー・ライデン結晶に対する治療薬やSyk阻害剤などでEotaxin-3などの分子やILC2に対する変化を観察する。真菌アレルギーでILC2どのような変化が起こるかは不明でであり、本研究で真菌アレルギーモデルを用いてILC2の細胞死を中心に検討する。
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