研究課題
難聴を引き起こす三大原因は、騒音暴露、薬物、そして加齢である。最新の研究により、音響性や薬剤性、加齢性聴覚障害の初期病変として内有毛細胞と蝸牛神経間のシナプス病理、Cochlear Synaptopathy(primary neural degeneration)の病態が注目されている。本研究では、Cochlear Synaptopathyモデルマウスを作成し、内耳障害における内有毛細胞・蝸牛神経間のシナプス再生の可能性を検討する。現在は神経保護効果および神経・シナプス再生作用を有するとされるROCK阻害薬に着目し検討を行っている。ROCK阻害薬は緑内障や脳血管攣縮の分野では保険適応薬剤としてすでに臨床応用されており、本研究により聴神経障害に対して有効性が確認できた場合、聴覚障害に対する画期的な治療薬として内耳再生研究のブレークスルーとなることが期待される。これまでのex vivo実験系を用いた先行研究で神経障害モデルに対するROCK阻害薬の効果を確認していたが、PCRによるRho-ROCK経路の障害前後の発現変化を確認し、結果をまとめて国際論文発表をおこなっている。引き続きROCK阻害薬の蝸牛神経障害に対する再生効果をin vivo実験系で検討し、laser-induced shock wave(LISW)を用いたCochlear synaptopathyモデルに対するROCK阻害薬の効果の検討を行った。作製したCochlear synaptopathyモデルに、正円窓経由でROCK阻害薬を投与したところ、ROCK阻害薬10 mM投与群で、ABR第I波振幅の再増大及び、シナプス数の増加が確認された。さらに蝸牛組織において、神経伸張を妨げる作用のある転写因子であるRhoAのmRNA発現が、ROCK阻害薬の投与で減少したことが確認できた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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