研究課題
The Cancer Genome Atlas (TCGA)データベースからRNA-sequencing dataを用いてHuman Papillomavirus (HPV)陽性頭頸部癌とHPV陰性頭頸部癌の癌微小環境における免疫担当細胞、サイトカイン、免疫関連分子の遺伝子発現の相違を検討した。まず発現分子について包括的なプロファイリングを行い、T細胞やB細胞関連遺伝子発現が有意に高いlymphocyte signature、好中球やマクロファージ、樹状細胞関連遺伝子発現が有意に高いmyeloid/DC signature、免疫関連遺伝子発現の乏しいcold signatureの3つのimmune signatureに分類した。HPV陽性頭頸部癌では、lymphocyte signatureが有意に多かった。このlymphocyte signatureでは、他のタイプに比較して、PRF1、IFNG、GZMB、PDCD1、LAG3などの分子の発現が高かったことより、HPV陽性頭頸部癌では、HPV陰性頭頸部癌に比べて抗腫瘍免疫応答が活性化しており、そのことが予後良好である一因になっていると考えられた。また、頭頸部癌患者の末梢血から単核球を分離し、Flow cytometryにてT細胞サブセット及び免疫チェックポイント分子の発現を解析した。HPV陽性20例、HPV陰性20例について解析したところ、各T細胞サブセットにおいては両群で有意差を認めなかったが、HPV陽性は制御性T細胞の比率が低い傾向にあった(p=0.053)。また、CD103陽性CD8 tissue resident memory T細胞が、HPV陽性頭頸部癌の末梢血で有意に高い結果であった。さらに、この細胞におけるTim-3分子の発現がHPV陽性頭頸部癌で有意に高かった。
2: おおむね順調に進展している
TCGA databaseを用いて、HPV陽性とHPV陰性頭頸部癌のがん免疫微小環境の解析を行うことで、HPV陽性頭頸部癌では、リンパ球浸潤が高く、抗腫瘍免疫応答が亢進していることが示唆され、両者間での免疫環境の違いが明らかにできた。一方、実際の頭頸部癌患者における末梢血単核球(PBMCs)を使った解析では、現在20名ずつの計40名の解析が終わっており、予想より症例数としては集まっている状況である。これらの症例については既にHLA-A24のスクリーニングを終えており、今年度にはHPV特異的T細胞及びp53特異的T細胞の同定及びT細胞誘導に及ぼす免疫チェックポイント阻害剤の影響についての実験を開始できるようになっている。また、HPV由来の抗原については、ペプチドとは別に遺伝子組み換えカイコを利用したE6/E7のfusion proteinの作成を開始しているところである。
HPV陽性頭頸部癌患者及びHPV陰性頭頸部癌患者からの末梢血、血清を更に集めつつ、外科手術を受ける患者の原発巣及び転移巣からの組織採取を継続して行い、TILsについての解析を進めるための準備を始めていく。今後は、HPV陽性患者におけるHPV由来oncoproteinであるE6及びE7に対する特異的免疫応答の評価を進めていく。既に、HLA-A24の患者の同定をFlow cytometry解析の際に同時に行っており、10例程度が集まっている。これらの末梢血を用いてE6及びE7由来のHLA-A24拘束性ペプチドを用いた癌抗原特異的免疫応答の評価や免疫チェックポイント阻害剤が免疫応答誘導に及ぼす影響、血清中の抗HPV抗体との相互関係などを解析していく。今後の研究のために、1)TILsやPatient-derived tumor fragmentを用いたアッセイ系の確立、2)間質細胞、特に癌関連線維芽細胞のHPV陽性頭頸部癌とHPV陰性頭頸部癌における違いと抗腫瘍免疫応答への関与の検討、3)免疫チェックポイント分子であるTim-3に着目した実験系の確立を進めていく。
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