これまで、HPV陽性頭頸部癌を対象にHPVのoncoproteinであるE6及びE7由来の抗原ペプチドとp53由来の抗原ペプチドを使ってがん抗原特異的T細胞免疫応答についてELISPOT assayを用いて検討してきた。HPV E6/E7特異的T細胞応答が23名中22名(95.7%)で、p53特異的T細胞応答が20名中3名(15.0%)で同定され、HPV E6/E7の方でより有意にT細胞応答が同定され(p<0.0001)、ウイルス抗原の免疫原性が強いことが確認された。またp53についてはタンパク抗原を使って同様のアッセイを行ったところ、ペプチドに比較してタンパク抗原の方が高頻度にT細胞応答が誘導、同定された。 PD-1、CTLA-4 、TIM-3、LAG-3に対する抗体を用いて、これらのがん抗原特異的T細胞応答が増強されるかどうかを解析した。HPV E6/E7に対する反応は23名中4名で、p53に対する反応は20名中9名において、いずれかの抗体でT細胞応答の増強を認めた。特にPD-1阻害によるものは、他のチェックポイント分子阻害に比べて有意にT細胞応答が誘導された(p=0.0281)。チェックポイント分子阻害によるがん抗原特異的T細胞応答増強の免疫学的背景を調べるために、培養に用いた単核球におけるT細胞サブセットと免疫チェックポイント分子発現細胞の割合を解析し、T細胞応答増強群と非増強群間で比較したことろ、増強群ではKi-67+CD4+T細胞、Ki-67+CD8+T細胞、制御性T細胞、TIM-3+CD4+T細胞の割合が有意に高値を示した。 さらに症例を増やして末梢血単核球におけるT細胞サブセットとチェックポイント分子発現T細胞との相互関係を調べたところ、TIM-3+CD4+T細胞の比率は、より分化した、あるいは活性化したCD4+T細胞の比率と正の相関を認めた。
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