研究実績の概要 |
内耳研究には一般に齧歯類などの非ヒト非霊長類モデル動物が用いられるが、これらを駆使しても解決できない科学的課題がときに存在し、その原因の一つにモデル動物とヒトの間の種差の存在が指摘されている。このため内耳研究では、種差の問題の克服のための新しい研究ツールの確立が求められていた。コモンマーモセットは、近年モデル動物として注目されている南米原産の小型霊長類である。これまでに我々は、本動物を用いた遺伝性難聴研究により、ヒトとモデル動物との間のギャップを少なからず埋められることを明らかにしてきた(Hosoya et al. 2016 Sci Rep. 他) 。本計画ではコモンマーモセット内耳研究を、胎生期から高齢個体に到るまでの全ライフスパンに拡張する。内耳発生学 的研究および加齢性難聴研究プラットフォームとして確立すると同時に、遺伝性難聴モデル動物としての拡充を図るべく、分子生物学的手法を用いて組織解剖学的な詳細な検討を行い、霊長類内耳細胞の網羅的な解析を行う。 2021年度には、胎生期のコモンマーモセットにおいて、蝸牛神経系の発達における重要なタイムステージの同定と種差の及ぼす影響について検討を行った。検討内容は、"Neuronal development in the cochlea of a nonhuman primate model, the common marmoset"として、Developmental Neurobiology誌に掲載された。その他、遺伝性難聴の原因遺伝子として知られるCx26、Cx30の発現パターンについても検討を行い、本検討結果も、"Dynamic Spatiotemporal Expression Changes in Connexins of the Developing Primate's Cochlea" としてGenes誌に掲載された。
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