研究課題/領域番号 |
20H03837
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石田 晋 北海道大学, 医学研究院, 教授 (10245558)
|
研究分担者 |
村田 美幸 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (50423752)
神田 敦宏 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (80342707)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 糖尿病網膜症 / Glycer-AGE / 網膜神経病態 |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症は重篤な視機能障害をきたす疾患であり、その病態理解は眼科学における重要課題である。これまでの糖尿病網膜症治療はその血管病態を制御することを目的とされてきたが、近年、糖尿病網膜症における「神経病態」が注目されている。しかし、糖尿病網膜症における神経保護的治療法は現在のところ確立されていない。グリセルアルデヒド由来の終末糖化産物(Glycer-AGE)は、その細胞障害性の強さからToxic AGE(TAGE)とも呼ばれ、糖尿病網膜症を含む様々な疾患での病態形成への関与が報告されている。申請者グループの検討により、このTAGEが糖尿病モデルマウスの視細胞変性に寄与していることが明らかになった。本研究では、TAGEによる網膜神経病態の機序を解明し、さらにTAGEを標的とした創薬開発を行い、糖尿病網膜症の新規治療法開発を目指している。 網膜色素上皮細胞は視細胞外節の貪食能や網膜-脈絡膜間のバリア機能を有し、視細胞の恒常性の維持に重要である。当該年度の研究では、培養ヒト網膜色素上皮細胞を用いたin vitro実験において、TAGEが網膜色素上皮細胞のバリア機能を低下させることがリアルタイム細胞アナライザーであるicelligenceを用いた解析によって明らかになった。臨床検体を用いた解析において、糖尿病網膜症患者の血清中でTAGEは非糖尿病性網膜症患者の対照群と比較し増加傾向は見られたものの有意な差ではなかった。一方、終末糖化産物(AGEs)を網羅的に測定した汎AGEsの値は糖尿病網膜症患者で対照群と比較して有意に増加していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、1. 培養網膜色素上皮細胞に対するTAGE負荷による細胞機能変化の解析、2. TAGE特異的中和抗体の作製・スクリーニング、および、3. DR患者の血中TAGE濃度と神経病態との関連について検討を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、研究協力者によるTAGE特異的中和抗体の作製に遅れが生じ、2.の検討については十分に進めることができなかったため、やや遅れていると自己評価するものである。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度はTAGEと他のAGEsでRPEに対する作用を検討し、比較をおこなう。また、これまでの解析でヒト培養RPE細胞にグリセルアルデヒドを添加してTAGE化反応を誘導し、TAGE化される標的タンパク質候補を同定している。本年度はDR患者より採取した臨床検体において、同定されたTAGE化標的タンパク質濃度がDR患者の眼内で変化しているかを解析する。また、TAGE化標的タンパク質に対する抗体および抗TAGE抗体のELISAでの測定を行い、両者に相関がみられるかを検討する。
|