研究課題
本研究では眼発生において足場ECMや周辺環境が及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。本年度においては、p63およびPITX2をEGFPで標識したレポーターiPS細胞を用いることで、眼表面上皮細胞の初期発生に影響する因子について検討を行った結果、足場ECMの重要性と併せて、表面外胚葉自身が分泌するBMPと神経網膜から分泌されるWNT阻害因子が重要であることが明らかとなった(Kobayashi Y., Hayashi R. et al. Stem Cell Res. 2020)。さらにWNT阻害因子を検索したところ、DKK1およびSFRP2が発生初期に神経外胚葉領域において産生されていることを見出した。これら因子に対する特異的中和抗体を用いることで、多能性幹細胞からの眼表面上皮発生が有意に抑制されることを明らかとした。神経堤マーカーPITX2を標識したiPS細胞株に関しては、その樹立および性質の評価を行い、我々の眼細胞誘導法(SEAM法)においてPITX2陽性の眼周囲神経堤細胞が特定の領域に発生することを示した(Okubo T. Hayashi R., et al. 2020)。今後、樹立したPITX2-EGFP KI-iPS細胞株を用いて、眼周囲堤細胞の発生機構およびそれが他細胞系譜に与える影響についても検討を行う予定である。足場ECMの硬さと眼細胞分化に関する検討においては、足場が柔らかい条件では神経外胚葉分化が促進されることが示唆された。また多能性幹細胞から誘導される各眼細胞領域を分離し、RNA-seqを実施したところ、各領域において発現する特異的ECMの発現パターンを明らかとした。領域特異的に発現するECM分子を新たに見出すことに成功したため、眼発生におけるこのECM分子の役割についても検討を開始した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究成果により、眼発生機構に関わるECM分子や液性因子の同定を行うことが出来た。また、系譜追跡可能なレポーターiPS細胞を樹立することに成功した。
これまでの結果より、レポータiPS細胞等を用いることで足場および特定の液性因子が初期の眼発生に関与していること、さらに特異的なECMが領域特異的に発現していることが新たに明らかとなった。今後はYAP等を中心とした外部環境から伝達されるシグナルおよび今回見出した特異手ECM分子に着目して、眼発生機構の解明に取り組む。
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