ぶどう膜炎とは、眼内の虹彩、毛様体、脈絡膜およびそれらに隣接する組織に起きる炎症の総称である。ぶどう膜炎により重度の視力障害を来す患者も少なくなく、ぶどう膜炎は我が国における失明原因の上位を占める難治性疾患である。ぶどう膜炎の病態の全容は未だ明確ではないものの、ぶどう膜炎の発症において遺伝要因が重要な役割を果たしていると考えられている。本研究では、ぶどう膜炎の主要な原因疾患であるベーチェット病、サルコイドーシスおよび強直性脊椎炎を対象に、各々の疾患を多発する複数家系を用いて、全遺伝子上のエクソン領域の全塩基配列を決定(エクソーム解析)することにより、各疾患の発症要因となる疾患責任遺伝子の特定を行う。本研究で得られる成果は、ベーチェット病、サルコイドーシスおよび強直性脊椎炎の病態の解明を可能にするとともに、各々の疾患の根治治療を目的とした新規治療薬の開発を可能にすることが期待される。 2021年度までに、ベーチェット病(日本人2家系)、サルコイドーシス(日本人2家系)、強直性脊椎炎(イラン人4家系)の発症を多発する家系を対象に、次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析を実行し、各々の疾患多発家系において疾患の発症要因となる責任遺伝子変異を特定している。2022年度は、疾患多発家系のエクソーム解析で網羅的に特定された疾患責任遺伝子が、各疾患の多発家系特異的なものか、または各疾患の症例全般においても発症の要因となっているかを確認するため、各疾患の日本人および海外人種の孤発症例を用いて検討を行った。その結果、特定した遺伝子の多くが、疾患多発家系特異的な遺伝要因であった。一方、特定した遺伝子の一部は、疾患の症例全般においても遺伝要因となる可能性が示唆された。
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