研究課題
高齢化が進む我が国において、肺炎は死亡率が第3位であり対策が必要な疾患となっている。なかでも特に高齢者の肺炎の多くは誤嚥性肺炎によるもので、嚥下障害が関係している。嚥下障害の基礎となる嚥下のメカニズムについて、これまで基礎的な研究が精力的に行われてきたが、嚥下の仕組みは複雑・精緻であり、いまだに不明な点が多い。本研究は、嚥下の神経回路機構を明らかにすることを目的としている。嚥下の神経回路を研究するため、孤束核、腕傍核、顔面核を含む摘出脳幹-脊髄-舌付き標本を作製した。 生後 0~3日の発達過程における神経回路で舌へのアミノ酸の効果を鏡像異性体である、D体とL体で正反対の効果を持つアミノ酸であるバリンの効果について調べた。出力として舌の動きを指標とし、舌の動きは舌筋に挿入された双極タングステン電極によって記録された。 Dーバリンを舌に滴下すると3~6分後に舌の動きが増加したが、L-バリンは舌の動きが止まり、抑制を示したので、DーバリンとL-バリン区別されて認識されていることが分かった。 また、この神経回路では、橋がないとバリンによる舌の動きに影響を与えないため、バリン認識には橋が必要であることが判明した。 in vivoの行動研究では、新生ラットはDーバリンを好んで飲む傾向があったが、L-バリンは吐き出すなどの行動を示し、摂取を避ける傾向を示した。このように、in vivoの実験でも D/Lバリンの違いが明確に検出された。
3: やや遅れている
業者の都合により代替不能な実験動物の導入困難が生じたため。
引き続き実験動物に導入先を検討する。研究項目の呼吸と嚥下とのクロストークに重点を当てた研究を行う。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
J Neurosci
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