研究課題/領域番号 |
20H03857
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
池田 通 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00211029)
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研究分担者 |
坂本 啓 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00302886)
栢森 高 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (10569841)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 破骨細胞誘導 / 口腔扁平上皮癌 / 破骨細胞前駆細胞 |
研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌細胞による破骨細胞誘導は、池田が有している11種類の口腔扁平上皮癌細胞株のうち10種類で見られること、既存の骨吸収抑制薬であるデノスマブや、破骨細胞誘導因子RANKLの強力な競合阻害蛋白として有名なOPGが全く無効のうえ、破骨細胞誘導のマスター転写因子であるNFATc1の発現上昇を伴わないことから、全く知られていなかった新たな破骨細胞誘導機構であること、多くの口腔扁平上皮癌の顎骨吸収の原因になっていることが強く示唆された。本研究は私達が発見した口腔扁平上皮癌細胞による新たな破骨細胞誘導機構を明らかにする目的で行っている。 想定した原因分子を蛋白質と仮定し、2020年度までにこれまでは代表的な口腔扁平上皮癌細胞株NEMと、破骨細胞誘導がほとんど見られない唯一の口腔扁平上皮癌細胞株であるHO-1-N1を網羅的解析の比較のために用いてきたが、より解析精度を上げるためにNEM細胞をリクローニングし、破骨細胞誘導能を失ったNEMサブクローンを得ることができた。このNEMサブクローンと、破骨細胞誘導能を有するNEMとで新たにmRNA発現マイクロアレイ解析を行った。2021年度には、これらのNEM細胞の培養上清から蛋白を抽出し、抗体アレイ解析を実施した。解析結果をmRNA発現マイクロアレイ解析結果と比較し、総合評価を行い、7種類の蛋白分子を選んだ。これらの蛋白分子が、私達が見出した破骨細胞前駆細胞を標的とした破骨細胞誘導にどのように影響するかを順次詳細に解析中である。これまでの研究結果から、IL-1がこの新たな破骨細胞誘導を強く増幅すること、IL-1アンタゴニストがこの破骨細胞誘導を効果的に抑制することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究費を繰越した2021年度には、順調に遅れを取り戻し、遺伝子発現及び蛋白発現の網羅解析を遂行し、結果を解析することができた。また、その候補蛋白の中からIL-1が私達が見出した破骨細胞前駆細胞を標的とした口腔扁平上皮癌細胞による新たな破骨細胞誘導をさらに増幅すること、IL-1アンタゴニストがこの破骨細胞誘導を効果的に阻害することを明らかにすることができたため、研究の順調な進展があったと判断した。 さらに、蛋白分子以外では、この新たな破骨細胞誘導に重要な関与があると考えられるカンナビノイド受容体に親和性がある複数の脂質分子についても解析を進めていることから、研究はおおむね順調に進展していると半算された。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には、これらのNEM細胞の培養上清から蛋白を抽出し、抗体アレイ解析を実施した。解析結果をmRNA発現マイクロアレイ解析結果と比較し、総合評価を行い、7種類の蛋白分子を選んだ。これらの蛋白分子が、私達が見出した破骨細胞前駆細胞を標的とした破骨細胞誘導にどのように影響するかを順次詳細に解析する。 一方私達はすでにカンナビノイドの一種で、中枢神経作用がないことから人体にほとんど害がないとされるカンナビジオール(CBD)が極めて効果的にこの破骨細胞誘導を阻害する事を見出している。CBDはカンナビノイド受容体の中で特にGPR55との親和性が高く、GPR55のアンタゴニストとして作用することが知られている。そのため、GPR55のアゴニスト5種類についてこの破骨細胞誘導に及ぼす影響を検討中である。これらの分子には脂質が多く、これまで行ってきた蛋白分子の解析では得られない、蛋白以外の分子の情報を得ることができると期待される。また、この中にはGPR55以外の既知のカンナビノイド受容体との親和性も高い分子が含まれるため、これらの分子の作用を検討することで、CBDによる破骨細胞誘導阻害のメカニズムを明らかにできるよう研究を進めている。
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