研究課題/領域番号 |
20H03860
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
筑波 隆幸 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (30264055)
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研究分担者 |
門脇 知子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (70336080)
坂井 詠子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10176612)
山口 優 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (50823308)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Rab44 / 炎症性骨破壊疾患 / 破骨細胞 / 免疫細胞 / 細胞内小胞輸送 |
研究実績の概要 |
歯周病や関節リウマチは代表的な炎症性骨破壊疾患であり、破骨細胞や免疫細胞の制御異常により惹起する疾患である。我々は独自の研究から、破骨細胞や免疫細胞に発現する新規遺伝子Rab44を見出した。一般的にRabタンパク質は細胞内の小胞輸送を制御していると考えられているが、Rab44は他のRabタンパク質とは大きく異なり、いくつかのドメイン構造を有する大きな分子である。しかし、Rab44の生体内での機能は不明である。本研究の目的は、炎症性骨破壊疾患におけるRab44の機能を解明することである。そのためにRab44のノックアウトマウスを用いて、歯周病および関節リウマチのモデル実験を行い、野生型マウスとRab44ノッ クアウトマウスでの病態を比較する。本研究によって免疫細胞や破骨細胞での細胞内小胞輸送の新たな一面を解明し、炎症性骨破壊疾患での役割解析に繋げる。Rab44欠損マウスは現在正常に発育しており、以下の解析を行っている。 1)Rab44欠損細胞の網羅的機能解析:破骨細胞のみならず、好中球、マクロファージ、樹状細胞などの代表的な免疫細胞に関して、野生型とRab44欠損マウスから採取し、炎症性サイトカイン分泌、TLRなどの応答性、カテプシン群などのリソソーム酵素の分解能などを測定した。 2)Rab44結合タンパク質の同定:Rabタンパク質の機能解明には、結合分子の同定が必要不可欠である。そこで免疫沈降法と質量分析法を用いて解析する。抗Rab44 抗体を用いた内在性のRab44 因子に対する解析と共に、GFPやFlagタグを融合させたリコンビナントRab44タンパク質を発現させて抗タグ抗体による共沈実験も併せて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に作製したRab44欠損マウスの表現型を解析した。次に現在、血液検査および組織学的解析を行っているが大きな差異は見当らなかった。骨組織の表現型解析では個体差が大きいが、特に大きな変化は認められなかった。Rab44の結合タンパク質の同定ではマスト細胞においてRab44はVAMP8と結合していることを明らかにした。さらに破骨細胞ではGDP特異的にCoronin1Cと結合していることも見出した。従って、総じて順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
Rab44遺伝子欠損マウスでの病態モデル解析 ・歯周病モデル: 野生型とRab44欠損マウスの口腔内に粘調性を付与するため2%カルボキシメチルセルロースと混和した歯周病細菌のP. gingivalisを経口投与する。投与を3日おきに6週間繰り返す。これを野生型とRab44欠損マウスとで比較する。組織骨吸収の程度は、10%次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸漬して軟組織を除去した後、セメントエナメルジャンクションから歯槽骨までの高さとして算出する。 ・関節リウマチモデル: コラーゲン関節炎はII型コラーゲンに対する自己抗体により惹起される慢性炎症性疾患である。具体的な方法として、II型コラーゲンに対するモノクローナル抗体カクテルをマウスに静脈投与し、さらにLPSを腹腔内投与して関節炎を誘導する。免疫後4週から関節炎が発症し、7-8週で炎症のピークに達すると予想される。このモデルを用いて、野生型とRab44欠損マウスの病態の比較を行う。
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