研究課題/領域番号 |
20H03865
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福田 隆男 九州大学, 大学病院, 講師 (80507781)
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研究分担者 |
西村 英紀 九州大学, 歯学研究院, 教授 (80208222)
讃井 彰一 九州大学, 大学病院, 講師 (70507780)
新城 尊徳 九州大学, 歯学研究院, 助教 (20711394)
武富 孝治 久留米大学, 医学部, 講師 (10553290)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯肉幹細胞 / エクソソーム / miRNA |
研究実績の概要 |
新たな再生療法として幹細胞移植が盛んに研究されているが、従来の細胞治療の概念に加え、幹細胞が分泌する微粒子による効果にも注目が集まっている。すなわち、幹細胞による疾病治療効果には、幹細胞から分泌されるエクソソームと呼ばれる細胞分泌小胞が中心的役割を果たつある。申請者らは歯肉幹細胞(GMSCs)が分泌するエクソソームの有する著明な抗炎症・創傷治癒促進効果に着目し、歯肉幹細胞由来エクソソームmiRNAを新たな核酸創薬ターゲットとした新規歯周治療の分子基盤を確立することを目的として研究を進めてきた。 一般的に、歯周炎による歯槽骨破壊には炎症性(M1)マクロファージが関与する一方で、歯周組織再生の成功には、炎症の終息と組織再生を担う修復型(M2)マクロファージの誘導が不可欠である。申請者はGMSCsを炎症性サイトカインであるTNF-α刺激することでnegative feedback機構が働き、GMSCs由来エクソソームによるM2マクロファージ誘導能が促進することを確認し、マウス創傷治癒モデルおいても著明な治癒促進効果を認めた。その分子機構について解析を行った結果、TNF-α刺激後のエクソソームで高発現した抗炎症分子CD73がM2マクロファージ誘導に重要であることを発見した。 さらに歯周炎への治療効果についてマウス歯周炎モデルで検証を行った結果、TNF-α刺激GMSCs由来エクソソームによる著名な歯槽骨吸収抑制効果を確認した。GMSCsへのTNF-α刺激前後でのエクソソームmiRNAアレイ解析により、TNF-α刺激により誘導されたエクソソーム内miR-1260bが、破骨細胞活性化因子RANKLの発現を阻害をすることで骨吸収抑制効果の中心的役割を果たしていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯肉幹細胞由来エクソソームが有する抗炎症能による、M2マクロファージ誘導およびmiRNAを介した歯周炎モデルでの骨吸収抑制効果についてまとめ、論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
歯肉幹細胞(GMSCs)由来エクソソームの抗炎症能を介した歯槽骨吸収抑制効果まで確認を行ったため、次のステップとして、GMSCsとM2マクロファージのエクソソームを介したクロストークによる歯周組織再生への影響について検証を予定している。近年、歯周組織再生に重要とされる歯根膜幹細胞(PDLSCs)が、修復性(M2)マクロファージとの共培養により歯周組織再生に重要なセメント芽細胞へより分化することも報告もされており、修復性 (M2) マクロファージによる歯周組織再生促進効果のエビデンスが構築されつつある。 そこで、マウスで歯周炎惹起後にエクソソームを注入することで誘導されるM2マクロファージを介した歯周組織再生効果の評価を行う。同時に、修復性(M2)マクロファアージによる分子機構について、以下の検証を行う。1. ヒト末梢血由来CD14+単球を購入しCSF刺激でマクロファージ分化後、① IL-4/13刺激および ② GMSCs由来エクソソーム刺激でM2マクロファージを誘導する。2. M2マクロファージ(①, ②)の培養上清からエクソソームを回収し、当院外来患者から単離した歯根膜幹細胞における石灰化能およびセメント芽細胞への分化能を検証する。3. GMSCs由来エクソソームmiR-1260bのmimic / inhibitorの導入による特異性も検証する。
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