研究課題/領域番号 |
20H03866
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
北村 知昭 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (50265005)
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研究分担者 |
鷲尾 絢子 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (10582786)
田畑 泰彦 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (50211371)
池田 弘 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (80621599)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バイオセラミックス / バイオアクティブガラス / ゼラチン・ハイドロゲル / 根尖歯周組織 / 再生療法 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は,骨再生用スキャフォールドとして応用可能な新規生体材料を開発し根尖歯周組織等に生じた骨欠損部の再生療法を確立することにある.これまで申請者らはBioactive Glass(BG)配合生体材料の開発を進めており,その成果の一部はBG配合根管用シーラーとして臨床応用されている.本研究では,BG配合生体材料の開発をさらに発展させ,生体活性バイオセラミックスであるBGおよび生体吸収性バイオセラミックスであるβTCPから両者の特徴を併せ持つ粒子(BG-βTCP複合粒子)を作製し,成長因子徐放能を有するゼラチン・ハイドロゲルとBG-βTCP複合粒子を組み合わせたBG-βTCP複合粒子配合スキャフォールドを開発することを目的としている. 2020年度は作製したBG-βTCP複合粒子の作製と性能検証を開始した.分担研究者・池田の独自技術を用い,BGおよびβTCP粒子粉末を所定の比率(1:1,2:8,8:2)で混合後,BGの焼結温度(約900度)にて熱処理してBG-βTCP複合粒子を作製した.各複合粒子を培養液に浸漬することで抽出液を作製した.各複合粒子からの抽出液を用いて各種細胞(マウス骨髄細胞,ヒトセメント芽細胞等)を用いて細胞毒性をBG単独と比較した結果,特定割合で混合した複合粒子では細胞毒性がBG単独と比較して低いことを明らかにした. 加えて,BG-βTCP複合粒子配合セメントの作製に着手した.その前段階として,これまで申請者が開発したBG配合根管用シーラーに一定の比率で配合することでセメント内のBG量を任意に調節できる新規パウダーを開発した.現在,骨組織やセメント質と接触する部位への応用可能な歯科材料としての製品化に向けて進めている段階である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在実施しているのは,生体活性バイオセラミックスであるBioactive Glass(BG)および生体吸収性バイオセラミックスであるβTCPから両者の特徴を併せ持つ粒子(BG-βTCP複合粒子)の試作と性能検証である.試作では,分担研究者・池田の独自技術を用い,BGおよびβTCP粒子粉末を所定の比率(1:1,2:8,8:2)で混合後,BGの焼結温度(約900度)にて熱処理してBG-βTCP複合粒子を作製した.その後,各複合粒子の抽出液を用いて各種細胞(マウス骨髄細胞,ヒトセメント芽細胞等)を用いて細胞毒性をBG単独と比較したところ,特定割合で混合した複合粒子では細胞毒性がBG単独と比較して低いことが明らかになった. 当初に予定していた進行度合はおおむね達成しているため,自己点検による評価としてはおおむね進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策は以下の通りである. 2020年度に明らかにした低い細胞毒性を示すBG-βTCP複合粒子のXRDとSEM-EDXによる結晶構造と微細構造の解析,およびICP発光分析を用いた複合粒子のリンイオンとカルシウムイオンの溶出挙動分析により複合粒子の材料学的評価を行う.その後,本複合粒子を配合したスポンジ状のスキャフォールドの作製を開始する.BG-βTCP複合粒子配合ゼラチンスポンジ作製には研究分担者・田畑が開発した成長因子徐放性ゼラチンスポンジ作製法を用いる.BG-βTCP複合粒子配合ゼラチンスポンジのSEMによる形態観察と細孔径計測,圧縮強度測定,スポンジ分解性評価,XRDによるハイドロキシアパタイト結晶分析,吸光度測定によるFGF2徐放性分析を行う. また同時進行で,既存のBG配合シーラーの機能向上を目的にBG-βTCP複合粒子配合セメントを試作し,擬似体液中でのpH測定,構造分析,ハイドロキシアパタイト結晶分析により検証する.
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