研究課題/領域番号 |
20H03869
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
宇尾 基弘 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20242042)
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研究分担者 |
稲田 幹 九州大学, 中央分析センター(筑紫地区), 准教授 (40624979)
小西 智也 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 教授 (90455163)
川島 伸之 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (60272605)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯科材料 / 歯内療法 / 歯科用セメント / イオン徐放 |
研究実績の概要 |
(1) 噴霧乾燥法および乾式破砕法によるセメント微粒子の試作と諸特性評価において、無機塩類を原料とした水系および水/有機溶媒混合系での噴霧乾燥法による複合酸化物微粒子の合成を試み、水溶性のストロンチウム塩およびアルミニウム塩を用いて、一次粒子径がサブミクロンの粒径の揃ったアルミン酸ストロンチウム微粒子を合成した。またコロイダルシリカを用いたケイ酸カルシウムの合成条件の策定を行った。加えて、従来の乾熱法による粗粒を、さらに乾式破砕装置を用いて平均10ミクロン程度の微粒子を得て、噴霧乾燥法による微粒子と合わせて、それらの水和硬化物の特性を比較した。その結果、噴霧乾燥法による微粒子は反応性が高く、均一混和には粗粒と比べて高い混水比が必要であること、乾式破砕法による微粒子では同一混水比で硬化させた場合に、破砕前の粗粒と比較して、若干の圧縮強さの向上と、練和泥の流動性の向上が認められた。 (2) X線造影性に優れた重元素含有セメントの合成について、希土類であるセリウムとストロンチウムの複合酸化物を乾熱法で合成し、その結晶相を調査して、水和硬化特性を評価した。その結果、セリウム酸2ストロンチウム(Sr2CeO4)単一相が得られており、水和硬化物は従来の歯内療法用セメントと同等程度の圧縮強さを示した。 (3) 上記セメントのイオン徐放特性と細胞毒性評価として、セメント硬化物からの水溶液中へのイオン徐放量を同定し、溶出液を培養細胞に暴露した際の細胞毒性や石灰化能を評価した。その結果、Srを多く含む溶液では石灰化の促進が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
噴霧乾燥法に加えて、乾式破砕法により粒度制御が可能となり、実用的な歯内療法用セメントの合成の可能性が広がったこと、また特に優れたX線造影性を持つセリウム酸ストロンチウムの合成・評価が可能となり、新規セメント組成物の開発に近づいたことから、上記の様に判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 噴霧乾燥法によるセメント微粒子の試作と諸特性評価 無機塩類を原料とした水系および水/有機溶媒混合系での噴霧乾燥法による複合酸化物微粒子の合成と粒径・粒形制御を引き続き試みる。乾熱法ではアルミン酸ストロンチウムの合成に成功しているが、噴霧乾燥法では原料に溶液だけでなく、コロイダルシリカなど微粒子固体原料の分散系も用いることが可能であることから、水溶性塩が利用困難なケイ酸塩化合物なども前年度に引き続き合成を試みる。また噴霧条件を変化させて、得られる粒子径や形状の変化を調査するとともに、硬化時の機械的特性との関連から最適合成条件を模索する。 (2) Sr含有新規合成セメントの細胞毒性・接着性および硬組織誘導能評価 乾熱法および噴霧乾燥法で合成したSr含有セメント、C12A7およびそのCaをSrに置換したS12A7の安全性や細胞接着性および硬組織誘導能を確認するためのin vitro試験として、一般的な繊維芽細胞の他、臨床上の適用部位を考慮してヒト抜去歯より分離した歯髄細胞を用いて、細胞毒性・細胞接着性試験を行う。さらに硬組織誘導培地下での培養により上記セメントの硬組織誘導能を評価する。 (3) Srおよび希土類含有新規セメントの探索 セメントにX線造影性を付与するには重元素を添加する必要があるが、本研究では造影剤を必要とせず、セメント主成分で十分なX線造影性を持たせるため、重元素である希土類とストロンチウムの複合酸化物を合成し、硬化特性、強度とX線造影性を兼ね備えた新規セメント組成物を探索する。
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