研究課題/領域番号 |
20H03886
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三浦 雅彦 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10272600)
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研究分担者 |
小野里 祐佑 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (10844300)
宇尾 基弘 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20242042)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔がん / 小線源治療 / α線源 |
研究実績の概要 |
昨年度は、まず、in vitroで、プラスチックシャーレ上に増殖させた種々の腫瘍細胞(細胞周期を可視化するFucciシステムを発現)にα線源を置き、タイムラプスイメージングにて細胞周期停止動態を解析した。その結果、p53遺伝子の変異の種類によって、線源近傍でG1停止を示し、その外側でG2停止を示す場合と、G2停止のみを示すパターンがあることが判明した。このことは、p53の新たな機能を見出した可能性がある。さらに、この腫瘍細胞をヌードマウスに移植して腫瘍を形成させ、α線源で種々の時間照射を行い、組織切片を作成し、その蛍光解析によって線源からの距離とG2停止を起こす距離との関係を明らかにした。同時にγH2AXの免疫染色を行い、DNA損傷の程度とG2停止を起こしている領域との照合を行なった。照射48時間後に取り出した腫瘍において、線源から 1 mm程度までは核全体がγH2AXで染色されたが、その外側では斑点状に染色されていた。G2アレストが認められた領域は、約1.5 mmであった。物理学的アプローチとして、高エネルギー加速器研究機構の放射光X線集光ビームを利用した蛍光X線分析を実施した。ヌードマウスに移植した腫瘍に線源を刺入、固定後組織切片を作成し、Ra-224の最終安定核種であるPb-208の検出を試みたが、バックグラウンドが高く、線源から拡散した組織中に存在するPbを特異的に検出することはできなかった。α線の飛跡を検出できるプラスチック素材バリオトラックの存在を知り、線源からのα線の検出を試みたところ、検出可能であることがわかった。そのデータから線量分布を得る解析を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物理学的アプローチとして実施した蛍光X線による組織中に分布したPb(Ra-224の最終安定同位体)の分布解析については、バックグランドを超えるシグナルを得ることができないことがわかった。α線の飛跡を検出できるバリオトラックというプラスチック素材があることを知り、in vitroでの条件を想定して検討したところ、Ra-224線源からのα線を十分に検出できることがわかった。現在、線源近傍の吸収線量を解析中である。生物学的アプローチにおいては、組織中でのDNA損傷量やG2停止と線源からの距離との解析が進み、ほぼ予定通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
物理学的アプローチにおいては、バリオトラックが我々の目的に適していることがわかったので、in vitro条件下のみならず、組織切片を用いた解析も実施し、組織内での線量分布を求める予定である。また、生物学的アプローチにおいては、物理学的アプローチにおいて作製した切片を用いて、DNA損傷やG2停止と線源からの距離との関係の解析を継続するとともに、組織中で娘核種拡散に影響を与える因子の解析をスタートする。p53遺伝子変異の違いが、細胞周期停止に与える影響についても解析を加える予定である。
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