研究課題/領域番号 |
20H03889
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
佐々木 朗 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00170663)
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研究分担者 |
志茂 剛 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (40362991)
奥井 達雄 岡山大学, 大学病院, 医員 (40610928)
吉岡 徳枝 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50362984)
伊原木 聰一郎 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (80549866)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 銅キレート / 癌性骨疼痛 / 癌の骨浸潤 / 高カルシウム血症 / 破骨細胞 / 口腔癌 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,生体銅を標的とした癌の骨破壊病変に対する新規治療法の開発とその制御機構の解析を目的としている。具体的には,銅のキレート薬(Ammonium Tetrathiomolybdate;TM)の癌の骨破壊病変(骨浸潤・高カルシウム血症・骨転移・癌性骨疼痛)について,臨床材料ならびに疾患モデルを作製してその有効性と作用機序を解析する。本年度は,口腔癌の顎骨浸潤した手術材料を用いて,主としてLOXを中心とした骨吸収の作業仮説を病理学的評価するために細胞外銅流出トランスポーター(ATP7B),破骨細胞誘導因子RANKL,銅依存性アミンオキシダーゼであるLysyl oxidase (LOX)発現に関して免疫組織学的検索を行った。初期進展癌,中程度進展癌,進行癌(虫喰い構造)である。いずれも蛋白発現は陽性で,組織アレイ検索でも同様の結果であった。骨破壊の程度(腫瘍進行度)に伴い蛋白発現が増加する傾向があり,腫瘍の骨破壊と銅関連因子の発現は相関する可能性が示唆された。症例数の追加ならびに他の骨吸収関連因子(OPGなど)について検討中である。次に,動物実験モデルに対する銅キレート剤TMの効果の検証であるが,口腔扁平上皮癌細胞株TM10(理研細胞バンク)を移植した高カルシウム血症動物モデルを用いてTMの薬物効果を検証中である。既に癌細胞移植モデルの作製は終了しており,高カルシウム血症発現前からのTMの予防的効果と症状発現後の治療的効果について検証中である。また癌性骨疼痛に関してはHigh-mobility group box 1の関与について結果を示しており,TMの効果の指標として検討予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究施設の改修工事による移転があり,移転作業や器機確保に問題が生じた。さらに新型コロナ感染拡大にともない研究計画が遅れ気味であった。特に大学院生の学内入構制限や予定していた研究器機(癌性骨疼痛の測定器機:大阪大学)の搬送に関して出張制限や自宅待機期間など準備に多大な時間がかかった。また予定細胞の入手が困難となり,代替細胞株を用いて高カルシム血症モデル作製を行ったため,予備実験を行う必要がでたためやや遅れがでた。概ね既に現在進行中である。また器機搬送も終えているために癌性骨疼痛の研究も実施可能となり準備段階に入っており,現時点では概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は研究計画全体がやや遅れ気味となったが,令和3年度は現在進行中の高カルシウム血症モデルの実験データの解析ならびに本研究課題の動物実験モデルに対するTMの効果検証を癌性骨疼痛モデル,心腔内骨転移モデルについても行う。またTMによる癌関連線維芽細胞の遺伝子発現の網羅的解析までを大学院生や分担者の協力を得て順次推進していく予定である。
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