研究課題
生体銅を標的とした癌の骨破壊病変に対する新規治療の開発とその制御機構の解析と目的としている。本年度は銅キレート剤TM(Ammonium Tetrathiomolybdate)に応答する癌関連線維芽細胞(CAF: cancer associated fibroblast),線維芽細胞,骨随間質細胞の発現タンパクの網羅的解析をESI-イオントラップ型質量分析システムを用いてLC-MS/MS測定プロテオーム解析を行った。CAFはヒト歯肉線維芽細胞株HGFにヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-3を用いた2層式共存培養法で作製し,α-SMAの発現を指標に分離した(以下,HGF-CAF)。対象は①HGF-control,②HGF-TM,③HGF-CAF-control,④HGF-CAF-TM,破骨細胞誘導を有する⑤骨随間質細胞株ST2ならびにST2-TMとした。なおTMは濃度を5μMとし48時間処理後,細胞を回収した。タンパクの質量解析は上位20位(32ー162の解析結果)についてTM群と対象群で比較してTMにより特異的に誘導されるタンパクを検出した。TM処理によりCAF-TMでは主に細胞骨格の関連タンパク群の増加が検出された。一方,HGF-TMでは細胞骨格に関与タンパクに加え破骨細胞分化を直接抑制するCalreticulinが増加し,破骨細胞形成を維持するST2では細胞骨格に関与タンパクに加え,骨芽細胞の細胞増殖因子やサイトカイン産生を調節する高分子量熱ショックタンパク質HSP90が検出されるなどTMは骨代謝系細胞の維持に関与することが示唆された。TMが銅存在下において骨芽細胞や骨細胞でのRANKL発現を抑制することを明らかにしており,TMは癌組織中に分布するCAFよりも骨破壊の最前線にある骨微小環境の細胞群において破骨細胞形成の抑制に関与する可能性が示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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