研究課題
本研究では、頸部リンパ節転移予測、再発監視、再発・転移難治性腫瘍に対する新規治療法に遺伝子異常所見を活用することにより、口腔扁平上皮癌の完全制御を目指す。根治切除した口腔扁平上皮癌の腫瘍部および隣接正常部よりそれぞれ genomic DNA (gDNA) と total RNA を抽出した。遺伝子変異の検出は、gDNA を解析対象として口腔扁平上皮癌に特化したカスタムパネルを用いて次世代シーケンサーによるターゲットディープシーケンシングを行った。腫瘍部 gDNA においてのみ検出される変異を腫瘍特異的遺伝子変異とした。また、遺伝子発現異常の検出は total RNA を用いて mRNA および microRNA (miR) マイクロアレイによる網羅的発現解析を行い、腫瘍部と正常部におけるそれぞれの発現量を比較した。まず、48 症例を用いた変異解析では、TP53 90%、NOTCH1 38%、CDKN2A 21%、PIK3CA 8%、HRAS 6% の症例に腫瘍特異的遺伝子変異が認められ、1症例を除いた全ての症例において何らかの遺伝子変異が検出された。一方、150 症例を用いた遺伝子発現解析では腫瘍部において 5 倍以上の有意な発現変動を示す mRNA が 143 種類、miR が 15 種類認められた。つづいて、これら遺伝子異常とリンパ節転移や遠隔転移との関連性を検討したところ、リンパ節転移と有意な相関を示す mRNA が 29 種類、miR が 1 種類認められた。また、遠隔転移と有意な相関を示す miRは認められなかったものの、mRNA は 76 種類認められた。以上の結果より、口腔扁平上皮癌における特定遺伝子の変異や発現制御破綻が明らかとなった。そして、これら遺伝子異常の把握が早期発見、リンパ節および遠隔転移予測、再発監視、新規治療標的の発見に有用となる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: 21695
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J Oral Maxillofac Surg Med Pathol
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