研究課題/領域番号 |
20H03897
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30359848)
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研究分担者 |
仲 周平 岡山大学, 大学病院, 講師 (10589774)
稲葉 裕明 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (70359850)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオフィルム / Streptococcus mutans / 膜タンパク |
研究実績の概要 |
バイオフィルム形成は、細胞―細胞間情報伝達機構であるクオラムセンシングにより制御されており、必要な栄養素を取り込み不要な物質を排出する役割を持つ膜タンパクが関与しているがその詳細は不明である。本研究では、分子生物学的手法を駆使して齲蝕および歯周病の主要な起炎菌における膜タンパクの役割を明らかにすることを目的としている。 S. mutans UA159 株のデータベースから、バイオフィルム形成に関連すると推定されるABC 膜輸送体をコードするSMU _1519 遺伝子を抽出した。SMU _1519の上流および下流領域、およびスペクチノマイシン耐性カセット断片をPCRにて増幅した。オーバーラップPCRで3つのDNA断片を連結させ、精製した。PCR産物をMT8148 株に形質転換することによりSMU _1519欠失変異株(Δ1519株)を作製し、実験に供試した。これらの菌株を対数増殖期まで培養し,RNA抽出を行い,RNA シーケンシングを行った。親株と比較して,遺伝子欠失変異株で2倍以上の変化を認めた遺伝子の解析を行った。その結果、MT8148株と比較し,SMU_1519 遺伝子欠失株において2倍以上発現が抑制した遺伝子は,ガラクトースやラクトースの代謝に関与するlac遺伝子を含む46種類であった。2倍以上発現が上昇した遺伝子は,アンモニアのトランスポーターであるnrgAを含む56種類であった。また,CSP添加によってSMU_1519 遺伝子の発現に変化は認めなかった。以上の結果から、SMU_1519 遺伝子欠失によって糖代謝に重要な役割を果たすlacオペロンの発現が抑制されることから,SMU_1519 遺伝子は増殖能やバイオフィルム形成に関与するシグナル伝達系によって制御されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオフィルム形成菌を採取し、それぞれRNAシーケンシングにより、バイオフィルム形成菌で発現が上昇している膜タンパクのスクリーニングを行うことができ、その解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.同定された膜タンパクに関連するタンパクの同定および機能解析:得られた欠失変異株を用いて、プロテオーム解析を行う。はじめにショットガン解析にて変化したタンパクの同定を行う。 2.スクリーニングされた膜タンパクのバイオフィルム形成における役割の解析:スクリーニングされた膜タンパクに関して、バイオフィルム形成能の評価を行う。評価は量的評価および構造評価を行う。特に構造に変化が認められた場合は、バイオフィルム形成に重要である菌体間結合力についての評価を行う。菌体間結合力の強弱により、バイオフィルムの強度を評価することができる。これにより、バイオフィルムの強度に影響を与える膜タンパクをスクリーニングすることが可能となる。 3.遺伝子ノックアウト株を用いたラット動物実験モデルにおける齲蝕および歯周病発症予防効果の検討:各菌の膜タンパク欠失株の齲蝕および歯周病発症抑制効果を検討する。齲蝕モデルは、生後15日目に強制離乳させたSpecific-pathogen-freeのSprague-Dawley系ラットを使用する。親株および欠失変異株の菌体懸濁液を5日間連続で摂取させることで菌を定着させ55日間飼育後に屠殺する。屠殺時のプラークスコアおよび齲蝕スコアを算出してその効果を判定する。
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