研究課題/領域番号 |
20H03898
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
岩本 勉 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90346916)
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研究分担者 |
山本 朗仁 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (50244083)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯の発生 / 細胞外環境 / 前エナメル芽細胞 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
多細胞生物体であるわれわれの個々の細胞は、周囲の細胞や細胞自身を取り囲む細胞外環境と相互作用することによって、厳密、かつ絶妙なバランスでその細胞の分化運命が決定され、それぞれが専門化した役割を担った細胞となり、さらに、その集合体によって最終的に精巧な器官を構築する。つまり細胞を取り巻く細胞外環境は器官形成における決定的な制御因子となる。本研究では、細胞―細胞間および細胞―細胞外環境間に存在するシグナルが細胞分化に及ぼす影響を解析し、器官発生、 形態形成を統合的に理解し、その原理解明を目的とし、歯の発生過程解明を目指している。 これまで、骨髄由来および脱落歯乳歯由来間葉系幹細胞に静水圧を負荷することにより、骨芽細胞や象牙芽細胞への分化を促進させ得ることを見出した。さらに、静水圧に応答し骨および歯の間葉系幹細胞の分化運命に関わる分子として、メカノセンサーチャネルPiezo1を同定した。 この過程で、低酸素誘導因子HIF1aが関与していることが示唆されている。 また、歯髄由来間葉系幹細胞に外因性にFGF2刺激を行うことで、自身が出す炎症性サイトカインに変化が生じることを見出した。このことは間葉系幹細胞が炎症の場の制御に関わる重要な役割を有することを示唆する知見である。さらに、バイオインフォマティクスより新規細胞外マトリックス分子von Willebrand factor D and EGF domains (Vwde)を同定し、同分子がエナメル芽細胞の分化およびエナメル質形成に関わることをin vitro実験系および遺伝子欠損モデルマウスを作成し、解析したin vivoの実験によって明らかにしてきた。最終年度は本年度までに得られた知見を元に統合的にさらに研究を発展させていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Piezo1の解析について、当初予定をしていた酸素分圧やpH、モルフォゲンの有無の影響の解析がやや遅れをとっているが、当初予定をしていなかった新規のシグナルカスケードを同定できたことから新たな知見の解析が進行している。一方で、バイオインフォマティックスを用いた新規分子の同定において、これまでに報告のない前エナメル芽細胞特異的細胞外基質の同定に成功し解析が計画以上に進んでいる。また、その他の新規分子の解析も開始されたことから、総じておおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度はこの2年で得られた知見をより発展させていく。特に、歯の発生に重要な役割を担うことが予想される新規の前エナメル芽細胞特異的細胞外基質分子については新たな概念や新規の細胞分化誘導法の開発において、大きな期待ができることから、ノックアウトマウスを用いた解析をさらに発展させていく。また、Piezo1の役割解明においても新たなシグナルカスケードを見つけることができたため成果発表を行う。この2年間で得られた結果の論文発表に注力する予定である。
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