研究実績の概要 |
近年、胎児期や乳幼児期の様々な環境要因(低栄養、ストレスや虐待などの成育環境、化学物質曝露など)が成長後の疾患発症リスク(肥満・糖尿病、アレルギー疾患、神経発達疾患など)につながるとするDOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)概念が提唱されている。その分子メカニズムはまだ不明な点が多い。本研究は、本研究の目的は、大規模な出生コホートを用いて胎児期・乳幼児期の環境要因が学童期の疾患や子供の健康・発達に及ぼす影響について、遺伝的背景を考慮した腸内細菌メタゲノム解析の観点から明らかにすることを目的とする。 今年度は、エコチル研究に特化(化学物質や栄養代謝関連、ストレス、肥満、神経発達、アレルギー関連など)した96のSNPsについて、DNAの取得できた8歳児1,768名、母親1,946名についてデータを取得した。また母親の糞便からDNA抽出し、約500検体について次世代シークエンサーにより16SrRNAデータを取得した。さらに母子のアレルギー性鼻炎の詳細な調査を実施するため、質問票を作成し、約1800組の母子から回答を得た。疫学解析から、妊娠中の食物繊維摂取と子供の発達に与える影響について発表を行った。さらに母親のアルコール遺伝子多型を考慮した妊娠中の飲酒と3歳児の発達遅延の関係、アレルギー性鼻炎症状と特異的IgEの関係をそれぞれ明らかにし、現在論文投稿中である。今後はさらにこれまで取得したゲノム、メタゲノムデータを基に、分子疫学的解析を行う予定である。
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