研究課題/領域番号 |
20H03933
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
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研究分担者 |
アウン メイジソウ 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10749584)
川口谷 充代 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70733062)
漆原 範子 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (80396308)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 / Staphylococcus argenteus / 市中感染型MRSA / 抗MRSA薬耐性 / 分子疫学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、薬剤耐性および臨床検査の面で近年注目されている新規ブドウ球菌種S.argenteus、市中感染型MRSA、薬剤耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌について、その疫学的状況を明らかにし感染対策の方策を探ることである。今年度、北海道においては共同研究機関での臨床検体からのS.argenteus、血液由来MRSAの分離保管を行い、その解析を順次進めている。健康成人の口腔に分布するブドウ球菌の研究では、133人の対象者から83株の黄色ブドウ球菌と4株のS.argenteusを分離した。そのうちMRSAは3株で、ST8、ST4775、ST6562の遺伝子型が同定された。ST6562はST8の変異型で、PVLおよびACME遺伝子を有し、米国で優勢なUSA300クローンに類似することが注目された。S.argenteusはST1223、ST2250に型別された。また食肉に分布するブドウ球菌についても、パイロットスタディーを実施し、市販挽肉から分離した黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌における薬剤感受性と薬剤耐性遺伝子について解析中である。ミャンマーとの共同研究では、ヤンゴン小児病院で小児患者から分離されたMRSA、MSSAの解析結果を論文として報告した。MRSAは約20%を占めST239が主体であり、この遺伝子型は顕著な多剤耐性傾向を示した。MSSAではST121などいくつかの主要な遺伝子型が認められ、いずれも多くの株がPVL遺伝子を有していた。PVL遺伝子は全体で61%と高い検出率が示され、MSSAにおける検出率(68%)はMRSA(35%)よりも高かった。さらにヤンゴン総合病院においても黄色ブドウ球菌の収集を行うとともに、解析を進めている。バングラデシュでは、マイメンシン医科大学附属病院において黄色ブドウ球菌臨床分離株の収集、保管を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道における臨床分離株の収集・解析が予定通り進められ、健康成人の口腔、市販食肉におけるブドウ球菌の解析が実施でき、口腔由来菌株に関しては論文公表に至ったため。ミャンマーとの共同研究では、小児由来ブドウ球菌の解析が完了し、また成人由来ブドウ球菌の収集が進められていること、同様にバングラデシュでも菌株の収集が進められているため。
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今後の研究の推進方策 |
北海道においては、2021年度に収集された血液由来MRSA、S.argenteus菌株、食肉由来ブドウ球菌株の遺伝子学的解析を引き続き進める。S.argenteusは継続して菌株の収集を行う。ミャンマーとの共同研究では、ヤンゴン総合病院での黄色ブドウ球菌の収集・保管を継続し、現地で実施可能な解析を支援・指導する。バングラデシュでも臨床分離株の収集を進め、COVID19の状況が改善した場合には現地での研究指導を検討し実施する。
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