研究課題
環境中の微小粒子状物質(PM2.5)やタバコ煙の粒子成分の肺への影響と同時に心血管系への影響の重要性も疫学研究で明らかになっている。また、ナノテクノロジーは、新材料創出、医療応用、地域温暖化防止に関係する環境技術等に応用可能であり、社会への貢献が期待される一方、新規工業的ナノ素材の健康への影響に社会的関心が高まり、生体影響に関するリスク評価が求められている。本研究では、今後その応用が期待されているカーボンナノチューブを含む繊維状物質に注目し、心血管系に対する影響を実験的に明らかにすると同時に、国内外のカーボンナノチューブ/炭素繊維加工工場の労働現場を調査し、曝露評価および繊維状物質によるヒトの心血管機能への影響を検討し、初期の影響を予測するバイオマーカーの有効性を検証することを目的とする。本年度は、カーボンナノチューブの血管内皮細胞における影響と、インフラマソーム構成タンパクの役割を検討した。最近、ストレス応答に関与する転写因子:Nrf2が、インフラマソームの活性化に関与していると報告されたため、12週齢の動脈硬化モデル動物であるApoE遺伝子欠損マウスとNrf2-ApoE二重遺伝子欠損マウスに、カーボンナノチューブ(単層・二層・多層)を14日間にわたり、咽頭内投与(aspiration)し、動脈硬化性プラーク病変の程度を測定した。また、インフラマソームの形成とその活性化を介した酸化ストレスや炎症反応の変化を測定し、病理学的変化との関連を解析した。
3: やや遅れている
12週齢の動脈硬化モデル動物であるApoE遺伝子欠損マウスとNrf2-ApoE二重遺伝子欠損マウスに、カーボンナノチューブを14日間にわたり、咽頭内投与し、大動脈弓部で動脈硬化性プラーク病変の程度を解析し、また、腹部大動脈からRNAおよびタンパク質を抽出し、インフラマソーム構成タンパクであるNLRP3遺伝子の発現とカスパーゼ1およびインターロイキン1-betaの活性を分析するなど、動物実験を実施した。同時に、国内の炭素繊維加工工場で、作業環境中の粒子数、ナノサイズの粒子の表面積を計測するなどの現場調査の計画を立てたが、県外移動が困難であったため、実施できなかった。
本年度中に、国内の炭素繊維加工工場の作業環境測定として、CPC (Condensation Particle Counter)とOPC (Optical Particle Counter)により粒子数を計測し、また、SMPS (Scanning Mobility Particle Sizer Spectrometer)で、ナノサイズの粒子の表面積を計測する予定であったが、新型コロナ感染症の流行で、工場での現場調査ができなかった。そのため、研究費の一部を繰越し、来年度に炭素繊維加工工場の現場調査を実施する予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
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