研究課題/領域番号 |
20H03935
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
市原 佐保子 自治医科大学, 医学部, 教授 (20378326)
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研究分担者 |
三瀬 名丹 自治医科大学, 医学部, 准教授 (00360644)
池上 昭彦 自治医科大学, 医学部, 助教 (60748739)
市原 学 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (90252238)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 繊維状物質 / 炭素繊維 / インフラマソーム / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
環境中の微小粒子状物質(PM2.5)やタバコ煙の粒子成分の肺への影響と同時に心血管系への影響の重要性も疫学研究で明らかになっている。また、ナノテクノロジーは、新材料創出、医療応用、地域温暖化防止に関係する環境技術等に応用可能であり、社会への貢献が期待される一方、新規工業的ナノ素材の健康への影響に社会的関心が高まり、生体影響に関するリスク評価が求められている。本研究では、今後その応用が期待されているカーボンナノチューブを含む繊維状物質に注目し、心血管系に対する影響を実験的に明らかにすると同時に、国内外のカーボンナノチューブ/炭素繊維加工工場の労働現場を調査し、曝露評価および繊維状物質によるヒトの心血管機能への影響を検討し、初期の影響を予測するバイオマーカーの有効性を検証することを目的とする。本年度は、動脈硬化モデルであるApoE遺伝子欠損マウスにカーボンナノチューブを投与し、大動脈弓における動脈硬化への影響と、動脈硬化誘導機構におけるインフラマソーム構成タンパクの役割を検討した。また、国内の炭素繊維加工工場で、CPC (Condensation Particle Counter)、OPC (Optical Particle Counter)およびSMPS (Scanning Mobility Particle Sizer Spectrometer)により、作業中の粒子数を測定した。さらに、労働環境中に飛散する繊維状物質をフィルター上に捕集し、電子顕微鏡でその形状と長さを評価し、その結果をまとめ、国内外の学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
繊維状物質による血管への影響を検討するために、動脈硬化モデル動物に、カーボンナノチューブ(単層・二層・多層)を14日間にわたり、咽頭内投与し、大動脈弓部を採取後、動脈硬化性プラーク病変の程度をオイルレッド染色にて解析した。腹部大動脈からRNAを抽出し、インフラマソーム構成タンパクであるNLRP3、カスパーゼ1およびインターロイキン1-betaの発現を分析した。また、国内にある炭素繊維加工工場で、CPC (Condensation Particle Counter)、OPC (Optical Particle Counter)およびSMPS (Scanning Mobility Particle Sizer Spectrometer)により、作業中の粒子数を測定した。さらに、労働環境中に飛散する繊維状物質をフィルター上に捕集し、電子顕微鏡でその形状と長さを評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、カーボンナノチューブを含む繊維状物質に注目し、心血管系に対する影響を実験的に明らかにすると同時に、国内外のカーボンナノチューブ/炭素繊維加工工場の労働現場を調査し、曝露評価および繊維状物質によるヒトの心血管機能への影響を検討することを目指している。今後は、カーボンナノチューブ以外の繊維状物質の生体影響を実験動物で検討するとともに、炭素繊維加工工場のスタッフで作業中の粒子数と心拍変動との関連を検討する予定である。
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