本研究は、学童、妊婦と出産児、高山市住民、農村地域住民を対象とした前向きコホートにて、乳がん、卵巣がん、子宮体がん、喘息、心血管障害、骨粗鬆症、うつ病のリスク因子である初経年齢、閉経年齢について、これを規定する生活習慣・環境因子を同定することを目的とした。学童コホートでは、5年間のエントリーによる小学1年生女子約1400名を対象に、中学3年時までの追跡を実施し、本研究期間の最終年度においてデータ収集を終了した。今後の解析に繋げる予定である。小学校5年生と中学2年生女子460名を対象とした横断調査では、月経の有無と月経周期の順調/不順に分け、栄養素および食品群摂取との関連性を評価したところ、月経の順調な女子において総脂肪、飽和脂肪酸、コレステロールの摂取は有意に高く、主食・いも類の摂取は有意に低かった。同対象者において尿中アクリルアミド代謝物量と月経との関連は認められなかった。中学2年生女子203名を対象に血中性ホルモンとIGF-1を測定したが、どのホルモンも尿中アクリルアミド代謝物量と有意な関連は示さなかった。月経を有する女子においてエストラジオール(P = 0.07)とIGF-1(p = 0.03)値は、そうでない女子に比べ高かった。 閉経前女性3090名を対象とした高山コホートでは睡眠時間が短い女性では閉経時期が遅いことが認められた。これを支持するデータとして睡眠時間が短いあるいは睡眠障害のある閉経前女性では、エストラジオールやテストステロン値が高いことを認めた。また、新しい規定因子の候補として、アクリルアミド、終末糖化産物、食事由来のメラトニン、スペルミジンの摂取や受動喫煙を評価したが、どの因子も閉経とは関連が認められなかった。農村地域住民のコホートでは尿中メラトニン代謝物と閉経との関連を評価したが、有意な関連性は認められなかった。
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