新型コロナウイルス感染症流行により、2020年以降、感染症流行動態・ヒトの移動の大幅な変化がみられ、インフルエンザ及びRSウイルス感染症本研究計画に影響を与えた。新型コロナウイルス感染症流行も、本研究の主たる対象としているインフルエンザ・RSウイルス感染症と同じく、呼吸器感染症であり、研究者は感染症疫学の専門家でもあることから、こちらも対象にして、データ解析を実施し、国際学術誌に10編以上報告をしてきた。
本研究対象期間の主な研究実績としては、新型コロナウイルス感染症を対象に、公衆衛生的インパクトを測る重要な指標の一つである、致死率について、数理モデルを用い、時間遅れを調整し、性別・年齢群別に遅延調整済み症例致死率を推定した。また、検査率が低い国では、報告データの信頼性が低いことから、ラテンアメリカでCOVID-19の検査率が最も高い国であるチリを対象にした。2020年8月31日時点で、時間遅延調整された症例致死率(CFR)の推定値は、男性で4.16%[95%信頼区間(CrI):4.09-4.24%]、女性で3.26%(95%CrI:3.19-3.34%)で、全体の推定値は3.72%(95%CrI:3.67-3.78%)となったが、80歳以上の高齢者の調整後CFRは、男性56.82%(95%CrI:55.25-58.34%)、女性41.10%(95%CrI:40.02-42.26%)となった。
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