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2020 年度 実績報告書

秋田県のカドミウム汚染地に対する全県的拡大調査

研究課題

研究課題/領域番号 20H03945
研究機関北里大学

研究代表者

堀口 兵剛  北里大学, 医学部, 教授 (90254002)

研究分担者 中嶋 克行  女子栄養大学, 付置研究所, 客員教授 (10444051) [辞退]
大森 由紀  北里大学, 医学部, 助教 (30415971)
松川 岳久  順天堂大学, 医学部, 助教 (60453586)
小松田 敦  秋田大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (70272044)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードカドミウム / 秋田県 / 農業従事者 / 米 / ヒ素
研究実績の概要

平成21年より秋田県のカドミウム(Cd)汚染地域で実施してきた住民健康調査を継続し、令和元年度は、稲刈り後の令和元年10月-11月に県北部Cd汚染地域の3つの集落において、及び令和2年2月にリンゴ栽培農家の多い県南部Cd汚染地域において住民健康調査を実施し、それぞれ61名、21名、合計82名の受診者が得られた。受診者の米・血液・尿の検体についてのCd濃度等の測定を令和2年度に実施した。その結果、現時点ではこれらの集落では基準値を超えるCd濃度の米はほとんど生産されておらず、従って住民のCd曝露レベルも低減しているが、血中・尿中Cd濃度及び尿中β2-ミクログロブリン濃度は対照地域よりも高く、過去の曝露によるCdが依然として体内に高度に蓄積しており、それによる腎尿細管機能への影響が現れていると考えられた。しかし、骨密度は対照地域と比較して有意な差は認められず、腎尿細管障害に続発する骨への影響は起っていないと考えられた。
秋田県のCd汚染地域では稲のCd吸収を低く抑える湛水管理という栽培法を実施している。一方、湛水管理により稲のヒ素吸収が亢進して米中ヒ素濃度が高くなる可能性も指摘されている。令和元年度の住民健康調査の結果、湛水管理を実施しているCd汚染地域の米中ヒ素濃度は、実施していない対照地域と比較して高くなく、尿中ヒ素濃度も高くなかった。従って、これらの地域では湛水管理は米中Cd濃度を低減するための非常に有用で安全な方法であると考えられた。
令和2年度の住民健康調査としては、11年前に住民健康調査を実施した県北部Cd汚染地域のひとつの集落において追跡調査を令和2年11月に実施し、104名の受診者が得られた。そのうち前回の受診者は83名であり、追跡率は59.3%であった。米・血液・尿中のCd濃度は現在測定中であるが、11年間での腎尿細管機能の有意な低下が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は小坂鉱山周囲の集落と横手市の集落において住民健康診断を実施する予定であった。これらの集落は過去に鉱山の影響を受けた農村地域であり、当該地域で米作を営んで自家産米を摂取してきた住民は高度のCdの経口曝露を受けて来たことが予想された。ところが、新型コロナウイルス感染症の流行により小坂町から事業への協力を拒否され、令和2年11月に予定していた住民健康診断は中止となった。また、令和3年2月に予定していた横手市での住民健康診断も緊急事態宣言発令と豪雪のために中止となった。しかし、もうひとつ予定していた、以前住民健康診断を実施したことのある大館市のひとつの集落での11年間の健康状態の変化を追跡するための住民健康診断は、地元のJAと当該集落の皆様の御理解と御協力のおかげで11月に実施することができた。
秋田県内の医療機関におけるカドミウム腎症スクリーニングについては、県北部、中央部、南部の各地域の医療機関(厚生連、クリニックなど)に継続して依頼している。今年度はさらに横手市でのスクリーニング事業を充実させるために横手市医師会に事業協力を依頼したところ、新たに4つのクリニックから協力の承諾を得ることができた。

今後の研究の推進方策

現在は追跡調査として大館市で実施した住民健康診断の受診者から得られた米、血液、尿の検体中のCd、鉛、ヒ素濃度をICP-MSで測定中であり、測定結果が出たら個別に報告書として送付する予定である。また、集落での全体報告会もそれに合わせて実施する予定である。また、来年度には今年度住民健康診断の実施できなかった集落であらためて実施する予定である。
これまでの秋田県内でのCdに関する健康診断のうち、県北地域(大館、鹿角、小坂)ではCd汚染地域と考えられる集落の大方で実施することができ、尾去沢鉱山の周囲で特にCd曝露レベルの高い住民が多く、Cd腎症患者も発生していることが判明した。また、医療機関でのCd腎症スクリーニングによっても各地でCd腎症患者が潜在していることが認められた。今後はCd腎症スクリーニングを継続し、また特にCd曝露レベルの高い住民が多かった集落を中心にさらに追跡の健康診断を実施することが必要であると考えられる。
一方、県南地域の横手市にはかつて大きな吉乃鉱山が存在し、それ由来のCd汚染地域が広がっているが、いまだその住民の健康への影響については住民健康診断の未実施地域が多く、実態は不明である。今後は横手市の当該地域において同様に住民健康診断を実施し、それに並行してCd腎症スクリーニングも実施することを計画している。また、県南地域の対照として東成瀬村での住民健康診断の実施を依頼し、承諾を得ている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Exposure Assessment of Cadmium in Female Farmers in Cadmium-Polluted Areas in Northern Japan2020

    • 著者名/発表者名
      Horiguchi Hyogo、Oguma Etsuko、Sasaki Satoshi、Miyamoto Kayoko、Hosoi Yoko、Ono Akira、Kayama Fujio
    • 雑誌名

      Toxics

      巻: 8 ページ: 44~44

    • DOI

      10.3390/toxics8020044

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 日本人における食品からのカドミウム曝露の現状2020

    • 著者名/発表者名
      堀口兵剛
    • 雑誌名

      北里医学

      巻: 50 ページ: 77~85

  • [学会発表] 一般病院の腎疾患患者における高β2-ミクログロブリン尿症2021

    • 著者名/発表者名
      堀口兵剛, 小熊悦子, 大森由紀, 小林桃子, 松川岳久, 澤村昌人, 菊地孝哉, 伊藤圭吾, 宮島江里子, 高橋遼
    • 学会等名
      第91回日本衛生学会総会
  • [学会発表] イタイイタイ病の展望~今後の予測と対策, シンポジウム6「イタイイタイ病の歴史と展望」2021

    • 著者名/発表者名
      堀口兵剛
    • 学会等名
      第91回日本衛生学会総会
  • [学会発表] 腎尿細管機能障害を含む集団における血中・尿中カドミウム濃度の曝露指標としての妥当性の検討2020

    • 著者名/発表者名
      堀口兵剛、小熊悦子, 村田勝敬,佐々木敏,宮本佳代子,大野智子,小松田敦,熊澤由美子
    • 学会等名
      メタルバイオサイエンス研究会2020(生命金属に関する合同年会)

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公開日: 2021-12-27  

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