研究実績の概要 |
本研究は、「先天性消化管閉鎖は一次予防できるのか」という学術的問いに答えるため、症例対照研究デザインを用いて消化管閉鎖、とくに今回は直腸肛門奇形、の予防につながる可能性のある生活・環境因子を明らかにすることを目的とした症例対照研究である。 2020~2022年度にかけて、小児外科が設置された大学病院や小児病院を中心とする直腸肛門奇形研究会の会員施設で根治手術を受けた(あるいはこれから受ける)症例に調査資料を配付し、本研究への参加に同意した母子72組を登録した。対照群としては人口の多い都市にある産科施設のご協力を得て明らかな先天性疾患のない子と母をリクルートし、1,522名を登録した。 症例72組と、対照1,522組のうち多胎3組と母年齢のデータがなかった2組を除く1,517組についてデータ解析した。母の妊娠前過体重(肥満)が直腸肛門奇形の危険因子ではないかと言われているが、この集団では関連していなかった。一方、母が妊娠初期に紙巻きたばこを吸っていたり、電子たばこや加熱式たばこを使っている場合、点推定値は1を超えてリスクが高まる方向性を示した。母が回答した父の喫煙について直腸肛門奇形との関連性が示唆され、母の喫煙を調整してもオッズ比は大きく減衰することはなかった。妊娠初期の飲酒については、母でも父でも関連性を観察しなかった。また、この集団全体での妊娠糖尿病の頻度は6.3%であった。糖尿病、妊娠糖尿病は先天異常全般的な危険因子であると考えられているが、今回は関連性を観察しなかった。
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