研究課題/領域番号 |
20H03960
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
須釜 淳子 藤田医科大学, 保健衛生学部, 教授 (00203307)
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研究分担者 |
大貝 和裕 金沢大学, AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター(保), 准教授 (40706983)
岡本 成史 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (50311759)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 褥瘡再発 / ブドウ球菌属 / マウス / 次世代シーケンス解析 / 細菌叢 |
研究実績の概要 |
コロナ禍の影響および研究代表者の職場異動のため、2020年度までの施設における臨床調査を行わず、研究室保管の検体を用い基礎的研究を進めた。 介護療養施設入院中で、1カ月以内に褥瘡治癒に至った高齢者を対象に収集した褥瘡治癒部(瘢痕部)の皮膚細菌叢の検体を用いた。検体から細菌の16S rRNA V3-V4領域を対象とした細菌「属」同定シーケンス解析の後、Staphylococcus属のみについて細菌「種」同定のシーケンス解析を実施した。その結果、褥瘡再発群(7名)においては、S.aureusあるいはS.capraeのいずれか一菌種が高い割合で存在していた。 次に、両細菌の関係性を検討する目的で、マウス創傷瘢痕部モデルを作成し、瘢痕部への滴下感染実験を行った。マウス瘢痕部への滴下感染から、両細菌種は、マウスの瘢痕部への定着能を有していることが明らかになった。S.aureusをマウス皮下へ注射した際には、肉眼的に創形成を認めたが、S.capraeでは肉眼的に創形成を認めなかった。また、両細菌種を同時感染させた場合には、S.aureusを単独感染させた場合と比較して、創形成が抑制されていた。S.aureusおよびS.capraeがそれぞれ放出する溶血毒素HlaおよびHldは、他方の使用済み培地存在下で、いずれも毒素の産生が抑制されていた。 以上から、両細菌種は、瘢痕部に定着後、互いの病原性を抑制しあうが、その存在比がいずれかに偏った際には、瘢痕部において病原毒素産生による障害性を発揮し、褥瘡の再発に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響および研究代表者の職場異動のため、2020年度までの施設における臨床調査を行わず、研究室保管の検体を用い基礎的研究を進めた。このため、予定していた臨床調査の実施ができなかったため、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ感染状況をみながら、新たに臨床調査フィールドの獲得を行う。また、これまでの成果から、褥瘡治癒後の瘢痕部への保護が必要であると示唆され、瘢痕部を被覆するケアについて症例検討に着手していきたい。
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