研究課題/領域番号 |
20H03962
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
清水 裕子 香川大学, 医学部, 教授 (10360314)
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研究分担者 |
高尾 英邦 香川大学, 創造工学部, 教授 (40314091)
峠 哲男 香川大学, 医学部, 教授 (80197839)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 皮膚面水分量 / 近赤外線測定 / ナノスキャナー / 脳波 / リラクゼーション / 蒸気布 / 皮膚面微細構造 / 人肌触り感 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、本調査で行った皮膚面における5種の清拭素材における温度・湿度・イメージの測定,近赤外線測定の結果は,日本看護理工学学会で発表した.近赤外線の皮膚面水分量測定方法の妥当性については,予備調査の結果を日本看護技術学会の論文として公表した.看護学分野において,近赤外線で皮膚面水分量測定を行ったことはこれまでに報告されていないため,先駆的成果を公表することができた. また肌表面の質感を高分解能で計測可能なナノ触覚スキャナーの開発を行い,日本電気学会で発表し,現在,国際会議プロシーディングスとして申請し,採択され校正中である.この開発は,CRESTの資金を共有しているが,2023年4月に令和5年度「科学技術分野の文部科学大臣表彰」において「科学技術賞 研究部門」の表彰を受けた.これまでに時間経過とともに皮膚面の滑らかさを測定することはできなかったため,先駆的な成果であった. また脳波測定は解析,解釈を終えて,日本臨床神経生理学会の次年度の発表と論文作成に向けて準備している.脳波とイメージは心理学と生理学による統合的な説明力を有することから,今後のイメージ測定における妥当性の説明に脳波結果を補足する可能性を検討する予定である.イメージは重要な主観指標でありつつも,エビデンスが困難であるため,今後の心理学に寄与できる説明を試みたい.これらの成果を受けて,研究代表者は,各指標が皮膚面清拭の際に素材選択に用いる評価基準を可視化して示すための検討を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年から3年間コロナ禍であったため,研究開始が約1年間遅れた.特に人を対象とする研究であるため、本学医学部倫理委員会に2021年6月に申請し、8月の倫理委員会の審査を経て、9月初旬に承認を得た。同時に、介入研究であることから、倫理委員会から国立研究開発法人 科学技術振興機構JRECの臨床研究実施計画・研究概要公開システムにに登録することが求められ、jRCT1060210045で登録した。実験は、2021年9月に実施され、創造工学部学生や医学部看護学生の協力を得て、医学部実験室で実施した。実験後、温度湿度の理学データとイメージの心理学データは、ナノテクノロジー測定、近赤外線測定、脳波測定に提供され、それぞれのところで、5つの試料における水分や皮膚面、脳波などの変化を分析し、解釈した。よって、倫理審査と本調査を2021年に一気に進めることができたため,遅れを挽回することができた. 2022年度には、近赤外線による測定や温度湿度とイメージデータ解析結果について、日本光学会、日本応用物理学会、日本看護理工学学会でそれぞれ発表し、近赤外線による皮膚面水分量測定は国内初であることから、日本看護技術学会で「短報」論文を公表した。 学内では、工看連携の成果として、黒潮カンファレンスで、国際学会では国際光工学会The International Society for Optical Engineering,でproceedingsにより公表した。また、この分析と論文発表にあたった創発科学研究科大学院生は、光学会表彰、修了式での特別賞を受賞するなど、新たな測定技法開発を創出することができた。 また、ナノテクノロジー測定では、スキャナー型計測装置にセンサ保護構造を搭載し、肌表面の質感変化を計測可能なセンシングシステムを開発し、清拭前後の肌表面特徴変化のデータを取得した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更や遂行上の問題は特にない. 2023年度は、ナノテクノロジーの測定について、45th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Societyでの2件の発表を予定している。これは、日本電気学会で2022年11月7日に発表した「肌表面の質感を高分解能で計測可能な防塵滴構造を有するナノ触覚センサー」を英語版で公表するものである。この学会発表では、プロシーディングを採択されているため、フルテキストでの公表も同時に実施する。 また脳波は、日本神経生理学会年次大会でポスターで発表後、英語論文として公表予定である。これらをまとめて、看護分野での論文作成を試みる予定である。脳波の結果では、リラクゼーション状態を表すslow αで有意に高いのは、蒸気発生型清拭具であり、蒸気の高い温度と皮膚の水分量の低さが影響を与えたものと思われる。 看護分野での人の肌触り感などの説明指標は、これまでには、経験的に看護師の主観で行われることが多かったが、この研究を通して、微量な水分量の違いにより感覚で受け取る「さわやかさ」「あたたかさ」を表すパラメータとして開発することができたので、工学知見を看護分野に活用可能な知見として提供する予定である。その際、工学説明指標が国際的な看護学の分野において、どのような進展状況があるのかを調査する予定である。そのため、本研究の看護研究者は、カナダのバンクーバーで開催される国際看護学会に参加し、当該知見の公表の方法について検討する。
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