研究課題/領域番号 |
20H03962
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
清水 裕子 香川大学, 医学部, 名誉教授 (10360314)
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研究分担者 |
高尾 英邦 香川大学, 創造工学部, 教授 (40314091)
石丸 伊知郎 香川大学, 創造工学部, 教授 (70325322)
峠 哲男 香川大学, 医学部, 客員研究員 (80197839)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 看護医工学連携 / 皮膚面水分量 / 希少デバイス / 脳波 / 触覚センサー / 肌触り感 / 心地よさ感 / 体性感覚 |
研究実績の概要 |
令和4年10月までに、学会発表準備、学会参加を行い、令和5年3月までに、論文作成を行う予定であったが、中国の事情により、学会に参加することができなかった。研究遂行上、学会参加が不可欠なため、学会での情報収集を延期して実施する必要が生じた。令和5年3月までに行う計画を同12月まで延長した。 基盤研究Bは最終年にあたり、皮膚面理学データ、赤外線皮膚面水分測定データ、希少デバイス皮膚面構造データ、心理学データの測定結果の発表を終え、R5年度には脳波と心理学データの測定結果の発表を行う。これら人間の体性感覚やこれと同時測定した皮膚面情報は、人の知覚をロボット構造に埋め込むための基礎的な知見である。特に人でなければといわれる「肌触り感」や「肌感覚が与える心地よさ感」などは、人の主観に依存し、客観指標による説明は不十分であった。 結果、令和5年7月1日~5日までモントリオールで開催された国際看護学会に参加し、特に世界の医工学連携の研究の実情について情報収集した。 今回の国際看護学会では、3年間のパンデミック後の対面学会であったため、2,800人が参加する大きな大会となった。その中の発表において、工学的な発表は人気があり、セッションルームに入れないという状況になった。記憶すべきテーマとしては、台湾の看護師による呼吸器装着患者への器機の改善の研究があった。また、AIやロボットを用いた研究セッションでは、入場制限が出るほどの盛況ぶりであった。 これらのことから、看護学工学連携は国際的に急速な進展ぶりを見せており、当方らの研究知見の看護学における注目度も高いことが推察される。国際的な看護学分野における論文作成を行う見通しが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画は、令和4年10月までに、学会発表準備を行い、令和5年3月までに、学会参加(中国)と論文作成を行う予定であったが、中国での学会員である医工学分野の学会参加が国際情勢も相まって参加できなかったので、若干の遅れが出ていた。 本研究で開発する生体工学測定技法は、工学分野での構築を計画しており、本研究チームのパイロットスタディの論文が日本看護技術学会誌で採択されたことにより、看護学分野で活用できること可能性に道を拓いた。そこで、研究遂行上、国際的な看護学分野における新規生体工学測定技法の活用可能性についての情報収集が不可欠なため、計画を見直し、工学分野ではなく、看護学分野の学会に変更し、令和5年7月に開催された国際看護学会に参加した。そこで、パンデミックの数年を経て、看護学世界は、ロボットやAIといった技術との融合が進んでおり、工学分野の看護技術のケアへの移転可能性は一層高まっていた。実績に記載の通り、当方らのケア技術への新規光学測定方法の転用は、看護学分野の関心を高まる可能性があった。 解析に時間を要していた脳波データは、2023年11月30日~12月2日までの第53回日本臨床神経生理学会学術大会においてポスター発表を行い、解析結果を提示した。また、触覚センサーは国内で高い評価を得、さらに国際学会で表彰を受け、皮膚面触覚測定の革新性が認められた。これらの世界水準の測定を看護技術の測定に用いた論文として、オーストラリアのInternational Journal of Nursing and Health Care Researchに2023年12月21日に投稿したところ、同27に受理、同30日にスピード公開された。この発表は、英国のScience Impact社の国際研究ガイドに著者紹介として招聘され2024年7月頃公開される。
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今後の研究の推進方策 |
International Journal of Nursing and Health Care Researchに2023年12月に公開した論文は、5つの測定結果を記述的に分析し、第一報として報告した。これまでにない、革新的な手法での評価であったため、それぞれの測定方法の特性を勘案して、相互の関係性を示すまでには至らなかった。今後は、その結果に至った理由や、相互の関係性の分析などについて、検討を深めていく必要がある。 特に、スピリチュアルな次元と肌感覚との相互性については、哲学的な検討も必要であることから、人の苦しみと癒やしの本質的な関係を検討したい。 この研究は、がんなどの苦しみを抱えた人間に対して、看護師が技術的に提供しうるケア効果の可能性に挑戦したものであった。そのことを、今後、心理学的、哲学的論考に進めたいと考えている。
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