研究課題/領域番号 |
20H03965
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研究機関 | 東京情報大学 |
研究代表者 |
川口 孝泰 東京情報大学, 看護学部, 教授 (40214613)
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研究分担者 |
浅野 美礼 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00273417)
今井 哲郎 長崎大学, 工学研究科, 助教 (10436173)
日向野 香織 つくば国際大学, 医療保健学部, 講師(移行) (10709695)
村上 洋一 東京情報大学, 総合情報学部, 准教授 (20548424)
大石 朋子 (大塚朋子) 東京情報大学, 看護学部, 講師 (40413257)
豊増 佳子 東京情報大学, 看護学部, 講師 (60276657)
木村 穣 関西医科大学, 医学部, 教授 (60298859)
伊藤 嘉章 東京情報大学, 看護学部, 助教 (60804870)
葛西 好美 東京情報大学, 看護学部, 准教授 (70384154)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 遠隔看護 / 地域包括ケア / 情報セキュリティ / 看護情報学 / 情報教育 |
研究実績の概要 |
近年、医療におけるAI技術はめざましい進歩を遂げている。在宅医療や訪問看護の分野では、複雑で多様な対象のデータ収集や個人情報など、効果的な医療への対応が求められている。そのための手段として、日々のPHR(Personal Health Record)の丹念な情報収集と、個別性の高い対象への看護師の経験知が反映された臨床判断に加えて、それらを支援するAIによる支援ツールの開発が期待されている。 とくに在宅医療では、病院での生活とは異なり、複雑多様な日常世界の中で生活している個別な存在である。そのため簡便で実践に即したツールの開発が必要とされる。本研究では、これまでの研究者らの研究成果を基盤に、IoT 技術を含むビッグデータの活用とAI 技術による臨床判断への支援、およびセルフモニタリングという当事者主体の、個別性の高い対象への支援に繋がる次世代の遠隔看護システムの構築を目指して研究を進めている。 現在、実施に向けた予備段階として、訪問看護ステーションでの勤務経験5年以上の訪問看護師約200名に協力を得て、訪問看護師が捉えた情報(患者の血圧・脈・体温、痛み、要介護度など)をまとめた特徴量X、訪問看護師の判断内容(看護問題を解決するためのケアの方向性)を示す変数をY、および訪問看護師の経験知に基づくデータを教師信号として設定し、特徴量ベクトルXを入力、判断ベクトルYを出力、看護師の判断データを教師信号として与えて教師あり学習を行い、特徴量から判断内容の特定を行う仕組みでAIを構築する準備を進めている。また国内において代表的な二次資料文献(CiNii, 医学中央雑誌など)などを参考に、教師データと一次資料文献とを関連付け、対象のケースに合致する一次資料の提供も可能とするAIデータベースを構築し、実装の可能性を検証する予定で研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、対象の個別性を重視したPHR(Personal Health Record)を基本理念に、対象が主体となるセルフモニタリングを積極的に取り入れた「患者と共にある医療 (D to P with N)」のデータベース化と、その活用に向けた開発を目指すものである。研究内容としては、次のとおりである。研究1)生体センシングとセルフモニタリング手法の開発、研究2)セルフモニタリング情報のビッグデータ・AI化への取り組み、研究3)セルフモニタリングシステムの構築と看護介入の評価、である。本研究は、以上の3つの柱で構成され、クラウドベースの遠隔看護システムの基盤となるプロトタイプの実用化に向けたシステム構築と実証を行うことを目的とした。
以上の状況を踏まえて2020年度は、PHR(Personal Health Record)の構築を基本としたアプリケーションツールの作成を行った。近年、スマートフォンを介した情報アプリケーションツールが多く開発され、日常生活の中に入り込んでいる。本研究では、遠隔看護の実践に求められるアプリケーションツールの開発と、医療情報として重要なEMR( Electronic Medical Record)情報の共有化も実現しつつある。これらのデータをもとに、患者と共にある医療 (D to P with N) を目指し、ビッグデータの構築やAI化に向けた取り組みを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
構築したセルフモニタリングシステムの有用性を評価するため、構築したプログラムを活用して遠隔看護の展開を実際に実施する。介入の評価は、研究協力の得られた対象(慢性疾患で境界領域の成人患者10名および、医療者20名<医師5名、看護師15名>を予定)に認知脳科学領域で使用される分析手法の一つである「レパートリー・グリッド発展手法」を用いて聞き取り調査を実施する。対象となる患者および医療者は、これまでの研究において研究参加の経験があり、十分な情報リテラシーを備えていることを条件としている。 また、本研究で準備するクラウドベースのシステムは、次世代遠隔看護の機能として、必須とされる①ルールエンジンや機械学習などを含むAIによる意思決定支援手段の構築、②ビッグデータの活用などによる知識提供(専門職用・クライエント用)、③OSやハードウェアの種類に依存されない多言語対応型クロスプラットフォーム、などのソフト構築を含む予定である。さらには、これらのデータを一括管理できる④クラウドデータベースの構築、⑤情報セキュリティ対策の取り組み、⑥医療・看護および関連多職種との情報連携、にも射程を置いて開発・検証を行う予定である。
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