研究分担者 |
大石 ふみ子 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (10276876)
葉山 有香 同志社女子大学, 看護学部, 准教授 (30438238)
山幡 朗子 愛知医科大学, 看護学部, 准教授 (40440755)
鈴江 智恵 一宮研伸大学, 看護学部, 准教授 (40807319)
出原 弥和 名古屋学芸大学, その他部局, 准教授 (80320985)
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,①抗がん薬を扱う病棟・外来に勤務する病院職員(医師,看護師,薬剤師,看護助手,事務職員,清掃職員)の唾液と尿のシクロホスファミド(以下,CPA)定量測定によって含有量(被ばくの実際)を明らかにすること,②これらの職種のガイドラインの遵守の実際と認識を明らかにし,職種間による認識の差や防護行動の違いを明らかにすることを目的とした。2020年度は外来がん化学療法を実施している7施設で調査を実施し,医師1名,看護師21名,薬剤師6名の計28名から唾液と尿の試料採取と質問紙調査を実施した。そのうち看護師1名の尿中からCPAが検出された。この対象者が点滴静脈注射をする際の防護具はサージカルマスク,プラスチックガウン,一重の手袋であった。調剤時にCSTDを使用していた。ベッドサイドの清掃や点滴ボトルの廃棄も行っており,詳細を分析中である。検体採取の課題は,尿を採取する時間が一定していなかったため分析結果への影響が懸念されたこと,清掃職員や事務職員の協力が得られなかったことであった。2021年度は3施設から医師1名,薬剤師6名,看護師12名,清掃職員1名,事務職員2名の計22名から協力を得て唾液および尿の試料採取と質問紙調査を実施した。前年度の結果を踏まえ尿の採取時間を24時間以上が必要と考え,翌日の勤務終了時に採取した。CPA使用量は最も多かったのが6180㎎で,最小量が910mgであった。22名中,同一施設から3名(薬剤師2名,看護師1)の尿からCPAが検出された。薬剤師が調剤したCPA量は960mg,アイソレーター内での調剤であった。防護具はサージカルマスク,プラスチックガウン,一重の手袋であった。看護師は直接投与に関与しておらず,CPAを使用した患者の病棟勤務であった。現在,曝露対策行動の詳細とデータを突き合わせ,分析を進めている
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
病院職員の尿および唾液内のシクロホスファミド含有量の調査を実施するためには,シクロホスファミドを使用した日に限定される。対象とした施設ではシクロホスファミドの使用頻度が少なかったため,予定したスケジュールで調査が進まなかった。また,Covid-19による県外移動規制があったため他県での調査を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
病院職員の尿および唾液内のシクロホスファミド(以下,CPA)含有量の調査につき,2020年度は7施設から28名,2021年度は3施設から22名の協力を得て調査を実施した。医療従事者以外の病院職員についてはCPAを扱った病棟に勤務する清掃員1名と事務職員2名の協力を得ることができた。調査結果を概観すると,曝露対策が整っていると考えられる大学付属病院およびがんセンターでは抗がん薬はすべての職員から検出されなかった。そのため,300床~500床未満の施設で一般病棟に範囲を広げて調査を進めることを検討している。また,これまでの調査結果から尿の採取時間はCPAを扱った時間から24時間以上~36時間を経ている必要があることが示唆されたため,採取時間を限定して実施する。2022年度の調査およびデータ分析予定は次のとおりである。①調査対象を大阪府,三重県,静岡県,岐阜県に広げ,一般病棟も対象とする。②事務職員,清掃職員についてはデータが少ないため,協力を得られる施設を,さらに範囲を広げて実施する。③抗がん薬が検出された施設の職員については曝露対策との関連を追及するためにインタビューおよび観察法で明らかにすることを検討する。④質問紙調査結果の分析を進め,職種間の曝露対策に差があるか,CPAが検出された職員と検出されなかった職員との違いは何かなどについて探り,抗がん薬曝露対策の課題を明らかにする。
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