研究課題/領域番号 |
20H03971
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
川野 常夫 摂南大学, 理工学部, 教授 (90152983)
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研究分担者 |
真嶋 由貴恵 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (70285360)
石亀 篤司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60212867)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 介助動作 / 熟練看護 / 暗黙知 / 生体計測 / ロボット |
研究実績の概要 |
要介護高齢者のQOLの向上および看護または介護する側の負担の軽減を達成するために,高齢者の身体的生体リズム,あるいは感情的生体リズムに同調する熟練看護の「技(わざ)」や「コツ」などの「暗黙知」を実験的に定量化することを目的として,実験では,介助作業中の高齢者と介助者の体動,筋電図,心電図,脳波,脳血流などを2人同時に測定し,両者の時間変化に「同調」が見られるかどうかの検討を行った。実験は,高齢者を2人で介助する移乗介助,車いすによる移動介助などを対象とし,それぞれの介助特性の定量化を試みた。その他,本研究に応用するための各種生体計測,すなわち脳波計測や脳血流計測(NIRS),自律神経系活性度の計測に関する基礎的な研究を行った。 2人で介助する移乗介助においては,脳波や脳血流,筋電図などが,動作の声掛け条件時に介助者間で同調が認められ,かつ両者の作業負担が軽減する傾向が認められた。車いすによる移動介助では,熟練者の介助と初学者の介助に違いが認められた。脳波の信号源を可視化する研究では人の快不快を評価できることがわかった。また,脳血流計測(NIRS)では,人の覚醒度(眠気抑制)を評価できることがわかった。自律神経系活性度の計測では,身体部分に対する刺激条件によって交感神経系と副交感神経系の活性状態が相反的に生起すること,すなわち自律神経系活性度を計測することによって人の緊張状態とリラックス状態を判定できることがわかった。さらに,熟練者の介助動作において身体動揺測定を新たに追加し,その特徴を検討した。その他,次年度の介助支援ロボットの開発に向けて,ロボットのコミュニケーションに関する基礎研究も実施した。 今後,看護,介護の技(わざ)の定量化,介助支援ロボットの開発を行うために,これらの知見を応用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた病院や高齢者施設の視察,調査は,コロナ禍による外出自粛などによって実施できなかった。また,現場で活躍する多くの熟練看護師を被験者として実験を行うこともできなかった。現在,病院や施設は多忙を極めているため,今後も実施は期待できないと考えている。 しかしながら,大学の実験施設を用いて,可能な限り被験者にお願いをし,各種生体計測を行って一定の成果が得られたため,いくつかの学会発表を行った。今後それらの成果を元に,予定している介助支援ロボットの開発に取り組むが,ロボットの開発にコロナ禍の影響はないと考えている。また,熟練の暗黙知やノウハウを後から逐次追加できる仕様とすることを考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の中心的テーマは,看護・介護の熟練者の介助方法を模倣する介助支援ロボットの開発である。介助支援ロボットが力センサーにより時々刻々の高齢者の動きを検知し,高齢者が動くために必要な力の一部(例えば,30%)を支援するようにする。どの人に対して,どのような援助を,どの程度,どのタイミングで,どのように援助するかといった最適な介助については,これまでに解析した熟練者の実際の介助動作から抽出し,そのノウハウ(暗黙知)をロボットに移植する。まずはパイロットスタディとして,ベッド介助と移乗介助を行う機能のみを有する基本的なロボットを対象とし,ロボットの両腕に付けた力センサーにより,高齢者自身が発揮する力を測定し,それの一部を支援する。本研究で重要な点は,熟練者のノウハウ(暗黙知)をいかに移植するかであり,その課題に注力し,最適な介助を行うようロボットを制御する方法を確立する。
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