統合失調症や気分障害等で精神科治療を受けている患者は、精神症状に伴う活動量の低下、薬物療法の副作用、摂取している栄養の偏りや水分摂取不足等により便秘を起こしやすい。特に、刺激性下剤は習慣性があり、長期連用により巨大結腸症を誘発するなど、腹部膨満感がガスによるものか便によるものかは治療を行う上で重要な判断となる。しかし、現状では、腹部触診や問診でその区別は困難であり、便秘の状況を正確に把握した上での適切なケアを提供できていない。そこで、申請者は利便性と安全性を兼ね揃え大腸を可視化できるエコーを用いて、臨床現場で精神科治療を受けている患者のための排便ケアの評価を行い、正確なアセスメント方法の確立を目的とした。 対象は浜松市内に所在する精神科病院に入院中の精神科治療を受けている患者、担当医にて便秘症と診断された20歳以上の男女50名を対象とする。器質性の腸疾患が確認されている者は除外した。調査内容は対象者の属性として、性別、年齢、日常生活自立度、併存疾患を調べた。排便障害に関しては、既往歴、排便の頻度、下痢症状の有無、および排便方法について調べ、下剤内服者については下剤の種類を収集した。超音波画像の撮影方法は申請者が過去に実施した調査方法と同様とした。調査方法は申請者が便秘症例のエコー画像のデータを収集し、超音波画像による便性状の評価は、硬便、軟便、正常に分類した。 その結果、便秘症と診断された患者の中には横行結腸を中心にガス貯留による排便障害が確認された。今後は、便秘症の患者に対してエコーを使用することで客観的な排便アセスメントによる適切な排便ケアが可能となった。特に、簡便に便貯留を確認できる直腸のエコー観察は、排便ケアを行う上で多くの情報が得られることが解明された。
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