研究課題/領域番号 |
20H03988
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
若林 律子 順天堂大学, 大学院医療看護学研究科, 先任准教授 (20609359)
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研究分担者 |
桂 秀樹 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (20277213)
永長 知孝 関東学院大学, 理工学部, 准教授 (30324544)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / セルフマネジメント / セルフモニタリング / 増悪予防 / アプリケーション |
研究実績の概要 |
本研究は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪発見、セルフマネジメント継続のためのアプリケーション開発を目的として実施している。 2021年度は、2020年度に行った慢性呼吸器疾患患者のセルフマネジメントに関するアンケート調査の結果を踏まえ、患者用アプリケーションと医療者用アプリケーションの開発を行った。 患者用アプリケーションでは、主に、増悪発見のために必要となる症状や徴候を定めるため、COPD患者のカルテ調査を行った。カルテ調査は、A病院にて2018~2021年にCOPDにて通院している患者217名を対象に行った。217名中、34名(15.6%)が増悪入院をしていた。34名の背景は、平均76.1歳、男性31名、女性3名であった。34名のうち28名(82.4%)が3年以内に再増悪を起こしていた。本調査から高齢者にも使用しやすいアプリケーションが必要であること、再増悪予防のためのアプリケーションが必要であることが示唆された。 本調査とCOPD増悪に関する文献からアプリケーションに搭載する項目を検討、決定し、患者用アプリケーションの入力ページを作成した。2020年のアンケート調査から入力のしやすさの必要性や継続の必要性、また2021年度の調査から高齢者での使用しやすさの必要性が示唆されたため、入力ページはできるだけ簡易にした。さらに、患者自身で入力状況や、経過を確認できるようグラフ表示を追加した。また、患者の状態に合わせ、メッセージを表示させる機能を加えた。表示するメッセージは、医療者間で検討を行った。 医療者用アプリケーションでは、患者のアプリケーションへの入力状況や患者の状態を一覧で分かりやすく表示できるよう検討を行った。患者用、医療者用ともセルフマネジメント教育資料がいつでも確認できるようアプリケーションに搭載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の増悪時の症状、徴候、対処方法を抽出するために、増悪入院をしたCOPD患者のカルテ調査を実施した。カルテ調査は、A病院の倫理委員会承認後、A病院の協力を得て実施した。COPD患者217名中、34名(16.6%)が増悪入院をしており、これら34名のカルテ調査を実施した。 これらの調査結果に加え、カナダで開発され、研究代表者らが日本語版を作成したCOPD患者のセルフマネジメント教育プログラム「COPDライフ」に基づいて、COPD患者用のアプリケーションと医療者用のアプリケーション「eCOPDライフ」の開発を行った。患者用、医療者用アプリケーションともWebアプリケーションで作成をしており、動作確認、修正を行っている。 「eCOPDライフ」は、増悪予防を目的としたアプリケーションであるため、増悪を早期発見できるよう、患者の状態に合わせてメッセージが表示されるよう作成をした。また、医療者用アプリケーションでは、複数の患者を観察していかなければならないため、増悪の可能性のある患者をわかりやすく表示できるよう修正を行った。また、「eCOPDライフ」はセルフマネジメントも目的としているため、患者がセルフマネジメントを継続できるよう調子のよいときには、励ましや称賛のメッセージが表示するよう作成した。 現在、研究者らでアプリケーションの動作確認は行っているため、次年度、実際にCOPD患者、患者のケアに携わる医療者の協力を得てアプリケーションの動作、機能性などについて調査を行う予定であり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度において、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の増悪予防のためのアプリケーションとして、患者用と医療者用の作成を行った。2022年度では、実際にCOPD患者、患者のケアに携わる医療者の協力を得て「eCOPDライフ」アプリケーションの動作、機能性などについて調査を行う。動作、機能性などの調査終了後、「COPDライフ」を用いた群、「eCOPDライフ」を用いた群で臨床比較試験を行う。すべての調査、試験はA大学の倫理審査委員会承認後に実施する予定である。 「COPDライフ」を用いた群では、「COPDライフ」は印刷した冊子を用いてセルフマネジメント教育を行い、「eCOPDライフ」を用いた群では、「eCOPDライフ」アプリケーションに入れたタブレット(iPad mini)を患者に貸し出し、セルマネジメント教育を実施する。研究に参加する医療施設には、患者と同様の「eCOPDライフ」アプリケーションと医療者用のアプリケーションを入れたタブレットを1台貸し出す他、医療者用は、URLを用いてパソコンからのアクセスも可能にする予定である。「eCOPDライフ」については、患者、医療者用とも使用方法マニュアルを作成し、臨床比較試験を行う予定である。 これらの調査、臨床比較試験などの研究結果は、学会発表、論文化を計画している。
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