研究課題/領域番号 |
20H04037
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研究機関 | びわこリハビリテーション専門職大学 |
研究代表者 |
三谷 章 びわこリハビリテーション専門職大学, リハビリテーション学部, 教授 (50200043)
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研究分担者 |
中井 隆介 京都大学, こころの未来研究センター, 特定講師 (10576234)
塚越 千尋 藍野大学, 医療保健学部, 講師 (20782478)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会性 / ニューロン活動 / 内側前頭前皮質 / 脳機能イメージング |
研究実績の概要 |
神経機構の解析:集団の中で他者との相互関係を良好に保ち適応的に生活する社会的活動に内側前頭前皮質の前辺縁皮質(PL)と下辺縁皮質(IL)の関与が示唆されている。我々はこれまでのラットを用いた実験においてこのPLとILは社会的行動発現時に相反的な活動パターンを示す可能性を示した。本研究では、社会的順位付け行動をするなど社会的行動のレパートリーが豊富なマウスの集団行動中のPLおよびILのニューロン活動を観察した。その結果、PLは他者に向かって接近行動をする時に、ILは他者から離去行動をする時にそれぞれ活動亢進し、マウスの集団行動においてもPLとILは相反的な活動パターンを示す可能性が高いことを観察した。今後、このPLとILの相反的活動パターンの社会的行動発現における意義を明らかにする必要がある。 社会性向上と内側前頭前皮質活性化の検証:社会性低下を呈する高次脳機能障害者に介入を行いその社会性向上に伴って内側前頭前皮質の活性化が起こるかを検証する計画であるが、コロナ禍の影響で高次脳機能障害者の実験参加者が確保できない。そこで、社会性形成の重要な因子である共感性について解析することとした。共感能力評価テストを用いて共感性を計測し、他者の社会的行動に対して共感を抱く共感性の高い人と共感をあまり感じない低い人を選別した。脳磁場計測装置を用いて他者の共感的行動を含む社会的交流場面を観た際の脳活動を観察したところ、共感性の高い人では共感性の低い人に比べ内側前頭前皮質および頭頂後頭溝周辺部に有意な活動増強がみられた。この内側前頭前皮質での観察は、内側前頭前皮質の活性化が社会性向上の神経基盤として働いているという考えを支持している。また、頭頂後頭溝周辺部の活動増強の観察は、頭頂後頭溝周辺部が社会性発現に関してどのような働きを担っているのかを明らかにするための解析を促す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響でニューロン活動送信機の組み立てに必要な電子部品の調達が遅れた。調達後、送信機を組み立てて実験を開始し、マウスの集団行動中のPLとILニューロン活動を観察することはできたが、社会性低下動物でのニューロン活動変化については観察できていない。 社会性形成の重要な因子である共感性について解析して論文発表したが、社会性低下を呈する高次脳機能障害者での社会性向上と脳活動についての観察はできていない。
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今後の研究の推進方策 |
神経機構の解析:PLとILの相反的活動パターンが社会的行動発現にどのような役割をもつかを明らかにするために、発達障害モデル動物などを用いて社会性低下動物における集団行動中のPLとILニューロンの活動変化を解析する。 妥当性の検証:実験参加していただける高次脳機能障害者の確保に努めるとともに、共感性の高い人でみられた頭頂後頭溝周辺部の活動増強が社会性発現にどのような働きを担っているのかを解析する。
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