2022年度は大きく以下の2点について検討を行った。 1 坐骨神経切除誘発性骨格筋萎縮に対する高周波骨格筋電気刺激の効果 坐骨神経切除は不活動モデルの一つであり1週間程度で約50%の筋萎縮が誘発される。我々は2021年度に単収縮を誘発する低周波骨格筋電気刺激(ES)がミトコンドリア生合成を介して筋萎縮を誘発することを見出した。2022年度は高周波ESによる萎縮抑制効果と低周波とのメカニズムの差異を検討した。10週齢の雄性SDラットを未処置群(Cont)、坐骨神経切除群(Den)、坐骨神経切除+ES群(Den+ES)に振り分けた。Den+ES群において坐骨神経切除直後よりESを10日間施した。ES条件は10分間の今日収縮(60Hz)とした。ES処理は坐骨神経切除による腓腹筋の萎縮を有意に抑制し、筋繊維断面積の低下も有意に抑制した。RNAseqによってDenに対してDen+ESではミトコンドリア生合成経路およびリボソーム合成に関わる複数のタンパク質群のmRNAが発現亢進していることが観察された。さらにリボソーム量の指標である18S、28S量はESによって増加していた。以上から高周波ESによっても骨格筋萎縮が抑制された。そのメカニズムにはリボソーム生合成の増加が寄与する可能性が示唆された。 2 サルコリピン(SLN)過剰発現が骨格筋量に与える影響 これまでSLNノックアウトマウスを用いてギプス固定骨格筋萎縮における萎縮の抑制を見出してきた。2022年度はアデノウイルスによる過剰発現系を用いてSLN過剰発現による骨格筋形態への影響を検討した。アデノウイルスによってSLN発現は10倍以上に増加することを確認した。さらにSLN過剰発現によって骨格筋重量は有意に増加したものの筋線維断面積は変化していなかった。従ってSLNは筋線維以外の筋たんぱく質合成に強い影響を与える可能性が示唆された。
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