研究課題/領域番号 |
20H04043
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
古江 秀昌 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20304884)
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研究分担者 |
神野 尚三 九州大学, 医学研究院, 教授 (10325524)
小林 憲太 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 准教授 (70315662)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 排尿 / GABA / シナプス前性 / シナプス後性 / 脊髄 / 副交感 |
研究実績の概要 |
排尿を指令する脊髄の中枢神経機構に着目し、未だ不明なことの多い正常排尿時の神経活動や排尿脊髄回路の詳細、更にその可塑的変化を、独自に開発した生理学的手法を用いた統合的研究により明らかにする研究を進めた。また、光遺伝学的手法を組み合わせ、排尿脊髄神経の活動を人為的に制御する為の研究も進めた。まず、脊髄スライス標本を用いたホールセルパッチクランプ法による解析を行った。GABA受容体作動薬がシナプス前性にグルタミン酸の放出量を低下させ、また、シナプス後性に作用して過分極性の外向き電流を発生し、副交感神経核の神経活動を抑制することを明らかにした。次いで、GABA受容体作動薬のin vivoでの効果を解析した。麻酔下に膀胱頂部からカテーテルを挿入・留置し、生理的食塩水を定量注入して排尿を一定の間隔で誘導し、さらに、腰仙部脊髄を露出して、脊髄側核、副交感神経核からin vivoで神経活動を記録した。排尿時に膀胱内圧が上昇する際に、副交感神経核の神経活動は一過性に上昇した。脊髄表面よりGABA受容体作動薬を投与すると、膀胱内圧の上昇する頻度が増加し、それに応じた副交感神経核の神経発火もむしろ持続することが明らかになった。このようにGABAによる抑制作用のvitroの系とvivoの系での作用の違いが明確となり、また、その可塑性に関する研究も進めた。排尿脊髄神経の活動を人為的に制御する研究では、Creマウスにウイルスベクターを投与し、GABAニューロン特異的に外来の光依存性イオンチャネルを発現させた。光度依存性にGABAニューロンの活動が制御できることを観察するなど、人為的活動操作法を確立する研究も進捗した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、内因性抑制系であるGABAによる排尿の調節機構の詳細を、スライス標本を用いたパッチクランプ法や、in vivo脊髄からの記録法を用いて統合的に解析し、その抑制作用の詳細が明らかになるなど神経機構の詳細な解析が進んだ。また、可塑的変化の解析に加え、人為的神経活動操作の研究も順調進んだ。ウイルスベクターを脊髄に注入し、Cre動物を用いてGABAニューロン特異的に光依存性のイオンチャネルを発現させ、光依存性にGABAニューロンの活動を制御できることを電気生理学手的解析から証明した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究を継続・発展させて脊髄神経機構の解析を進めるとともに、今年度進捗したウイルスベクターを用いた特定神経回路の操作に関する研究を更に展開する予定である。これには種々のウイルスベクターが必要となるために、生理学研究所・小林憲太先生を分担研究者として継続して追加する。
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