研究課題/領域番号 |
20H04059
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研究機関 | 福岡国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
光武 翼 福岡国際医療福祉大学, 医療学部, 講師 (00779712)
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研究分担者 |
坂本 麻衣子 佐賀大学, 医学部, 准教授 (10720196)
岡 真一郎 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 助教 (30637880)
中薗 寿人 福岡国際医療福祉大学, 医療学部, 講師 (70814771)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ノイズ前庭電気刺激 / 機能的磁気共鳴画像法 / 脳活動 |
研究実績の概要 |
近年,ノイズ前庭電気刺激(noisy galvanic vestibular stimulation; nGVS)は神経系における情報処理の可塑性の変化を誘発する確立共鳴を起こし,前庭入力による運動反応の閾値や興奮性を変化させることで姿勢制御機能を改善する手法として注目されている.前庭刺激方法としてカロリックテストや従来のGVSと異なっており,nGVSは方向性を特定せずに刺激することが可能で,臨床的な電気刺激介入の有効な選択肢となり得る.しかし,nGVSの神経基盤は明らかにされていない.本研究では機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging; fMRI)を用いてnGVS時の脳血流動態の解明を目的とした. 対象は24名の健常者とし,fMRI計測は電気刺激条件30秒,安静30秒のブロックデザインを4回繰り返し行った.電気刺激はGVSとnGVSの2条件を行った.画像解析では脳画像の動きを補正し,標準脳への変換,空間的平滑化を行い,脳活動領域を特定した. 両条件ともに安静時と比較して電気刺激時に様々な脳領域の活動が認められた.特に,nGVSでは両側側島や中心弁蓋を含む前庭覚関連領域の活動が認められた.これらの脳活動領域は最も大きなクラスターサイズを示した.一方,GVSでは縁上回や弁蓋部などの多感覚領域の活動が認められた.nGVSとGVSの活動領域の比較では,nGVSが左島前部,左被殻,右中心弁蓋の活動が認められた. 島周辺領域は前庭皮質の一部であり,姿勢の安定性に関係している.nGVSは両側の島領域を含む前庭皮質の活動性の増大に影響していることが示唆され,姿勢安定性を向上させる神経基盤として関係する可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定したように機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging; fMRI)を用いてノイズ前庭電気刺激(noisy galvanic vestibular stimulation; nGVS)を行っている時の脳血流反応を調査した.得られた画像データから脳画像解析ソフトウェアを使用して解析を行い,解釈することに時間を費やしたが論文の執筆に至っている. 新型コロナウイルスが蔓延している社会情勢の中,上半期は研究自体が滞る場面も認められており,実験自体を中断した時期もあった.その際,解析手法や脳神経ネットワーク構造の把握など関連分野の知識の上積みを図るなど,できることを行いながら研究を遂行した.下半期では研究分担者とオンラインによる議論を進めるとともに論文を執筆した. また,次年度以降に行うnGVS時の動作解析に関しても,実験環境を整えるとともに研究のプロトコル作成を進めている. 最大限の感染予防対策を行いながら作業を進めることができたため,概ね順調に進行している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として,まずは三次元動作解析装置を用いたノイズ前庭電気刺激(noisy galvanic vestibular stimulation; nGVS)時の姿勢応答反応の変化を検証していく.そのために,昨年度から実験環境の準備を行い研究デザインの構築を行ってきた.具体的には,三次元動作解析装置を用いてどの関節運動と筋活動の変動を捉えるか設定する議論を行った.さらに,三次元動作解析装置とnGVSを同期し,時間的誤差を最小限にした状態での計測を行えるように設定した.条件設定については,nGVSを行う時に知覚閾値以下に設定するが、その設定方法の確立やオンラインでの計測か実施後効果の検証かも検討する余地があり,上半期ではプレデータ計測を行いながら方法を確立していく. さらに,重心動揺計を用いた姿勢安定性の変化も検証するために,実験環境を整えていく.上半期には重心動揺解析装置を購入し,電気刺激装置との同期を行う.その後,別実験としてnGVSによる前庭脊髄反射への影響を検証するためにGVS-Hの実験を進めていく予定である. 複数の実験をデータ計測,環境設定,環境準備に分類して進めていくことで効率的にnGVSの姿勢安定性に関する多角的研究の推進を図る.
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