サラブレッドを対象として高強度インターバル運動を2つの異なる休息間隔でそれぞれ実施したところ、血中乳酸濃度のピーク値は休息時間の短い条件において長い条件と比較して約2倍の高値を示した。各条件の運動前および運動4時間後に採取した中臀筋サンプルを用いRNA-Seqによる遺伝子発現解析を行なった結果、骨格筋の適応に関わる主な遺伝子の発現はいずれの運動条件においても共通して増加していた。一方で、休息時間の長い条件では免疫およびサイトカイン応答に関連する遺伝子がより大きく発現が高まったのに対し、タンパク質フォールディングや熱ショック応答に関連する遺伝子の発現上昇は、休息時間の短い条件においてより顕著にみられた。これらの結果から、同一の運動内容であっても、乳酸を中心とした代謝物質の濃度変化の違いがトレーニング効果の違いをもたらす可能性が示された。 さらに、ピルビン酸投与によって体内の乳酸産生が促進されるのかマウスを用いて検証した。マウスにピルビン酸 (1 g/kg)を腹腔内投与したところ、投与10分後に血中乳酸濃度が14 mM程度まで増加した。各組織のピルビン酸濃度と乳酸濃度を測定したところ、骨格筋 (ヒラメ筋、足底筋)や肝臓ではなく、精巣上体脂肪のピルビン酸および乳酸濃度がピルビン酸投与によって有意に増加していた。また、乳酸/ピルビン酸の比も精巣上体脂肪においてのみ増加していた。投与したピルビン酸がどの組織や細胞に取り込まれ乳酸に変換されているかについては、さらなる検証が必要である。
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