研究課題/領域番号 |
20H04074
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
狩野 豊 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (90293133)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨格筋 / カルシウムイオン / 活性酸素種 / バイオイメージング |
研究実績の概要 |
本研究は,トレーニングなどのストレスにともなう細胞適応を誘導するスイッチ(切替装置)の役割が細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)と活性酸素種(ROS)のダイナミクス(細胞質中の空間的・時間的な濃度変化の連続)にあるという仮説を検証することを目的としている. 令和2年度は,Ca2+とROSのダイナミクスが運動刺激パターンを読み取り,スイッチのON/OFFの役割を担う可能性を明らかにするためのin vivoマルチバイオイメージング技法を構築することに着手した. 細胞内カルシウムイオン評価モデルでは,伸張性収縮後の筋損傷-再生過程ではタンパク質の分解や合成などの生理応答に着目し,これらを制御する細胞内Ca2+濃度の特徴的な時空間パターンの存在を調べた.その結果,伸張性収縮5時間後において,特に顕著なカルシウムイオンの変動を確認した.この動態は,タンパク質分解を活性化する特徴的な時空間パターンであることが考えられる. 細胞内ROS評価モデルでは,過酸化水素濃度に応じて蛍光強度が変化するタンパク質HyPerを利用した骨格筋in vivoイメージング法の確立を試みた.HyPerタンパク質を導入し,異なる濃度の過酸化水素滴下による過酸化水素動態をHyPerの蛍光強度比変化によってin vivo測定した.その結果,異なる濃度の過酸化水素の滴下により,筋線維毎に蛍光強度比の変動を画像化することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は,骨格筋にカルシウム蛍光指示薬(Ca2+, Fura-2) および ROS感受性蛍光タンパク質(H2O2, HyPer)をWistar系雄性ラットの脊柱僧帽筋に導入することによって,細胞質中のCa2+とROSをリアルタイムに測定する実験に取り組んだ. 細胞内カルシウムイオン評価モデルでは,伸張性収縮後の筋損傷-再生過程ではタンパク質の分解や合成などの生理応答に着目し,これらを制御する細胞内Ca2+濃度の特徴的な時空間パターンの存在を調べた.その結果,伸張性収縮5時間後において,特に顕著なカルシウムイオンの変動を確認した.この動態は,タンパク質分解を活性化する特徴的な時空間パターンであることが考えられる. 細胞内ROS評価モデルでは,過酸化水素濃度に応じて蛍光強度が変化するタンパク質HyPerを利用した骨格筋in vivoイメージング法の確立を試みた.HyPerタンパク質を導入し,異なる濃度の過酸化水素滴下による過酸化水素動態をHyPerの蛍光強度比変化によってin vivo測定した.その結果,250-1000uM濃度の過酸化水素の滴下により,筋線維毎に蛍光強度比の変動を画像化することに成功した. 以上の通り,Ca2+とROSのダイナミクスが細胞適応のためのスイッチとしてのON/OFFの役割を担う可能性を明らかにするためのin vivoマルチバイオイメージング技法を構築することに成功している.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では,Ca2+とROSのダイナミクスが運動刺激パターンを読み取り,スイッチのON/OFFの役割を担う可能性を明らかにするためのin vivoマルチバイオイメージング技法を構築する.また,運動時の代謝物質(乳酸,グルコース,ピルビン酸)の同時イメージングを確立する. さらに,Ca2+とROSのダイナミクスパターンと遺伝子発現,タンパク質発現,細胞形態,そして機能変化との関連性を明らかにする.スイッチのON/OFFの特異的なパターンによって,レジスタンス型あるいはエンデュランス型運動による細胞適応の違いが説明できる可能性を探る.具体的には,運動ストレスによるによるCa2+とROSダイナミクスを経時的に定量する.その後,筋を摘出し,遺伝子発現(mRNA),タンパク合成経路の活性,及びタンパク分解・アポトーシス,ミトコンドリア生合成経路の関連物質を分子生物学的に調べる予定である.
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