研究課題/領域番号 |
20H04078
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
北嶋 康雄 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (70734416)
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研究分担者 |
小野 悠介 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (60601119)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 筋再生 / 筋幹細胞 / Pax7 / サテライト細胞 |
研究実績の概要 |
超高齢社会をむかえた我が国では、サルコペニアに代表する筋萎縮の予防は重要な課題である。近年、加齢による筋萎縮の原因として、筋幹細胞数の減少による再生能の低下が指摘されている。しかし、これまでに筋幹細胞の生体内での性質の解析は困難であったことからも、筋幹細胞の維持機構については不明な点が多い。本研究は、Pax7YFPノックインマウスを用いて筋幹細胞の維持機構を明らかにし、骨格筋再生のメカニズムを解明することをめざす。 2020年度は、Pax7が標的にしている遺伝子を探索するために、ChIP-seq解析(クロマチン免疫沈降)を行い、その後、複数の候補遺伝子からRNA干渉法や筋幹細胞の増殖分化による遺伝子発現パターンなどにより絞り込むことを計画していた。Pax7YFPノックインマウス由来の筋幹細胞をFACS(細胞分取装置)によって単離し、ChIP-seq解析を行った。これにより、Pax7の新規標的遺伝子を網羅的に得ることができた。その後、転写開始地点から±2kbp付近にエンリッチされている領域を解析し、さらに候補領域、遺伝子を絞り込んだ。絞り込み後、いくつかの候補になった領域の遺伝子に関して、RNA干渉法により機能解析を試みたところ、興味深い結果の遺伝子を同定した。その遺伝子に関しては、ノックダウンすると増殖能が向上し、過剰発現すると細胞の増殖が低下することが分かった。さらに、過剰発現系での細胞増殖低下に加えて、Pax7陽性細胞が増え未分化状態が維持されていることが示唆された。これらは予備データであるため、次年度にさらに詳細に解析を行い裏付けデータを取る必要がある。以上により、筋幹細胞のChIP-seq解析により、Pax7の標的遺伝子を複数同定した。さらに、そのデータベースを元に機能的な遺伝子の候補を絞り込むことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に予定していた全ての解析が順調に終了したため。具体的には、Pax7が標的にしている遺伝子を探索するために、ChIP-seq解析を行うことであった。筋幹細胞はもともと筋核の1%しか存在しない、少ない細胞集団である。ChIP-seq解析のためには、標準的には6,000,000個の細胞が必要とされており、細胞の単離が困難であると予想された。しかし、個体数を増やすことで解析に必要な細胞数を得ることができた。もう1つの計画は、ChIP-seq解析で得られたデータから、RNA干渉法などにより機能的な遺伝子を絞り込むことであった。これに関しても、2020年度中に遂行することができたため、次年度以降のさらなる機能解析の計画に進むことができる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、前年度に絞り込むことができた候補遺伝子に関して解析を引き続き進める。前年度に得られたデータからPax7が標的にする候補遺伝子が複数あがってきた(前年度実績)。その中から、細胞の増殖・分化に関わるような遺伝子群をある程度抽出することができた。それらの情報を元にして、初代筋幹細胞系を用いて、遺伝子干渉法による遺伝子抑制実験および、過剰発現実験を行う。すでに複数の候補から絞り込んでいるため、それらを再検証することで裏付けデータを取る。細胞増殖を抑制する因子のみでなく、増殖を促すような因子の特定にも着目したい。本年度にそこまで同定することができれば、同定した遺伝子のノックアウトマウスを導入したい。もし、まだ生産されたノックアウトマウスが存在しない場合は、自己生産の準備を進める計画である。
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