研究課題
骨格筋はエネルギー代謝を担う主要な臓器であるが,その調節には液性因子による外的刺激が大きく影響を及ぼすことがわかってきたものの詳細は不明である。一方,腸内細菌が,血液成分に影響を与え,全身の臓器機能を修飾することが示唆されている。本研究は,腸内細菌叢,血液中胆汁酸,骨格筋代謝の関係を,動物,培養細胞,ヒトを対象とした研究により検討した。運動を習慣化させたマウスの便を無菌マウス(レシピエント)へ移植し,安静マウスの便を移植したレシピエントと比較した。高脂肪食条件で飼育後,骨格筋発現プロファイルを比較したところ,運動レシピエントにおいて,糖代謝関連因子,ミトコンドリア関連因子,成長因子,マイオカイン,受容体など約4000因子の有意な増加がみられた。また,タンパク質レベルの解析において,糖代謝シグナル経路,カルシウム依存性シグナル伝達経路,成長因子シグナル経路の活性化がみられた。ネットワーク解析においても,腸内細菌-胆汁酸-骨格筋代謝シグナルの関連が観察された。血漿胆汁酸の骨格筋細胞に及ぼす影響を検討するため,培養系において試験を行った。ミュリコール酸において,タウリン抱合型と比較して遊離型で,糖取り込み能が高く,炎症性因子CCL2発現が高値であった。コホート研究参加者から基礎情報,生活習慣等の情報をもとに50-60歳代男性150名を対象とした。血漿中胆汁酸の遊離型および抱合型の濃度を測定した。
2: おおむね順調に進展している
動物モデル試験,培養モデル試験ともにおおむね計画通りに進めることができ,ヒト試験においても血液分析を進めることができた。
運動による適応,ベネフィットは,強度によって異なり,腸内環境やバリア機能へも異なる影響を及ぼすことが示唆されている。そのため,ドナーマウスの運動強度の違いが,レシピエントマウスの代謝能に及ぼす影響について検討する。運動による腸内細菌干渉のメカニズムを考察するため,骨格筋分泌因子の影響について検討する。分泌因子遺伝子欠損マウスを用いて,腸内細菌叢の組成について野生型マウスと比較する。ヒト血漿検体における胆汁酸組成と身体活動量の関係について検討する。食習慣や喫煙習慣等情報も考慮しながら,特にタウリン抱合型,遊離型に着目し,脱抱合の影響について考察する。
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