研究課題
我が国の持続可能な超高齢社会の構築のために,アルツハイマー病 (AD) の増加は,解決すべき課題の一つである.しかしながら,ADの根治療法は未だ確立されておらず,罹患者は増加の一途を辿っている.身体運動は,ADの病態の一つである脳内 (中枢) インスリン抵抗性だけでなく,認知機能も改善することが示唆されている.安全で効果的な運動処方を実現するためには,ADが運動時における循環応答 (特に血圧応答) へ及ぼす影響を考慮すべきであるが,未だ不明である.本研究では,中枢インスリン抵抗性を呈するADモデルラットを用いて,ADの病態が,運動昇圧応答に及ぼす影響を検討することを目的としている.Sprague-Dawleyラットの第三脳室内に,神経毒ストレプトゾトシン (STZ) を注入し,8週飼育することで,脳内インスリン抵抗性ADモデルラット (STZラット) を作成した.一定の強さで受動的に下腿三頭筋をストレッチさせることで,運動時の機械刺激を模擬した.また,代謝受容器のアゴニストであるカプサイシンを投与することで,運動時の代謝刺激を模擬した.無麻酔・除脳下において,機械ならびに代謝刺激に対する反射性の心拍,血圧応答を測定し,STZラットと対照ラットにて比較した.ストレッチに対する応答では,心拍応答には有意差が認められなかったが,平均血圧応答はSTZラットの方が低い傾向(P=0.078)が認められた.カプサイシンに対する応答には心拍・平均血圧応答において2群間の有意差は認められなかった.これらの結果から,ADの病態は筋機械受容器反射を減弱させる可能性が示唆された(PI, UT Southwestern Medical Center, Masaki Mizuno).
2: おおむね順調に進展している
腎臓交感神経活動の測定ができていないため,また,第四脳室にインスリン注入をした影響を検討できていないためおおむね順調とした.
今回,アルツハイマー病(AD)の状態では,予想に反して運動昇圧応答が減弱したため,一過性の脳内インスリン抵抗性によっても運動昇圧応答が同じように変化するのかを確認する.そこで,Sprague-Dawleyラットの延髄孤束核に,インスリン受容体拮抗薬を注入することで一過性にインスリン抵抗性にし,その前後にて,運動昇圧応答を比較・検討していく.
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